遅ればせながらこのブログでも「徴用工」問題について書いてみる。まずは日韓請求権協定から。
恥ずかしながら非常に不勉強のため、様々なブログ・論文・ウィキペディア記事等を参考にさせていただいた。要するに人様の記事のパクリだがご容赦を!
なおこのブログでは、戦時性暴力被害者に対する「慰安婦」、強制連行・強制労働被害者に対する「徴用工」など、言葉が持つ印象を薄める(果ては加害事実を否定する)目的の造語を使わざるを得ない場合、必ずカギ括弧「」を付けることにする。
1965年に締結された日韓請求権協定(正しくは、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定。ウィキソースより)とは、
(a)日本から韓国に対し、3億ドル(に等しい日本の円)に相当する「生産物及び日本人の役務」を「無償で供与する」
(b)日本から韓国に対し、2億ドル(に等しい日本の円)に相当する日本の「生産物及び日本人の役務」を「長期低利の貸付け」によって提供する
これによって両国間の財産、権利、請求権の問題が「完全かつ最終的に解決された」とする国家間の協定である。つまり・・・日本から韓国へ金銭を支払ったわけではなく、日本企業も潤う国際援助だ。いわゆる経済協力だ。しかも韓国はこのうち4割の部分については返済する義務を負う。
■ また、この5億ドル以外に加えて3億ドルの支援が行われたというが、これは「民間信用供与」・・・韓国企業の負担を軽くする形の商取引だ。
※ 参考: 対韓ODA 日韓請求権・経済協力協定 〜1975年まで 朱鷺の森日記
各年の「外交青書」にて、この「民間信用供与」についての言及があるので少々引用するが・・・これは「政府が義務を負うものではなく、民間で行う延払い輸出を政府が容易にするもの」である。「漁業協力」や「船舶輸出」などを加えて3億ドル以上になることが「期待」された。(1965年)
「この商業信用は通常の延払輸出の形でわが国の輸出業者から韓国側輸入業者に対して供与されるもの」であり、一例として「漁業協力のため漁船及び漁業関係設備、器材類」や、「船舶(貨物船等)」輸出のためにこの取引が行われた。(1967年)
なお、この「民間信用供与」は3億ドルどころではない巨額に達したという。
以上のように日韓請求権協定による経済協力とは、日本の民間企業に利益をもたらす形だった。いわば内需拡大だ。これを明確にせずに単純に「日本は韓国に8億ドル賠償した」などという言動が(マスコミも含めて)多すぎる。もちろんこの経済協力が韓国の経済発展に大きく寄与したことは事実だが。
■ ところで、日韓の交渉中の1962年に韓国から提出された「韓国の対日請求要綱」は「対日請求8項目」と呼ばれ、様々な分野について賠償を求めているが、その中に「被徴用韓国人未収金」「戦争による被徴用者の被害に対する補償」という項目もある。
しかしこれは日韓請求権協定の成立の際に、「いわゆる八項目」については「いかなる主張もなしえないこととなることが確認された」。(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定についての合意された議事録)
つまり強制連行受難者への未払い賃金、補償について個別に日本政府が行うことはない、という日韓の合意が成立したことになる。もちろんそれらを補って余りあるどころか桁が違うほどの経済協力が行われたのだが。
■ 2005 年1月に韓国政府(当時は廬武鉉政権)は、日韓の請求権問題についての資料の一部を公開した。その中には、強制連行被害者への個別の補償などは韓国政府が負担することになるだろう、という韓国政府の見解を示す資料もあった。
1965年4月20日「第7次韓日会談会議録」によると、韓国側代表が「(請求権協定が成立すれば)全ての請求権が解決され、今後は両国が国内で対処するのみ」と述べたという。
※ 参考: アジアの真実・韓国で破綻した対日個人補償請求の理論 - livedoor Blog(ブログ)
また1964年5月、韓国の経済企画院長官が同国の外務部長官に、個別の補償について質問したところ、「(日韓請求権協定が成立すれば)個人請求権も解決する。個人に対しては韓国政府が補償の義務を負う」・・・と答えたという。
※ 参考: 日韓財産請求権問題の再考
実際に韓国政府は強制連行被害者のうち死亡者のみに補償を行ったが、申告の受理期間は1年未満、金額も一人当たりわずか30万ウォンだった。
※ 参考: 戦後補償訴訟における元徴用工問題と日韓関係
以上のように日本政府だけでなく韓国政府も、強制連行被害者を始めとする侵略戦争の被害者への補償を軽視し、経済発展を重視していたことが分かる。・・・もっとも、言うまでもないが全ては日本の朝鮮侵略・植民地支配がもたらした加害である。
(つづく)
※ 参考:
◇ 日韓条約文書公開-当時の両政府 個人補償請求権を黙殺-「日本は政治的責任を果たせ」-韓国政府 被害者・遺族への支援を検討
◇ 日韓「65年体制」を揺るがす「徴用工」判決 - 奥薗秀樹|WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイト
◇ 澤藤統一郎の憲法日記 ≫ 徴用工訴訟・韓国大法院判決に真摯で正確な理解を(その3) ― 弁護士有志声明と判決文(仮訳)全文
◇ 徴用工問題は本当に「解決済み」だったのか? 日本政府が60年以上にわたり隠蔽してきた日韓基本条約の欺瞞|LITERA/リテラ
◇ (2014年11月3日)強制動員被害者 韓国政府に請求権資金の返還求め提訴へ
◇ (2018年12月18日)元徴用工ら集団訴訟を計画 韓国政府を相手に (写真=共同) 日本経済新聞
※ 余談だが、韓国の文喜相国会議長が「日本の天皇が慰安婦に謝罪すれば解決する」と述べ、日本政府から謝罪と撤回を要求されると「盗っ人たけだしい」と反発した。
◇ 韓国議長「日本、盗っ人たけだけしい」 謝罪要求に反発 (写真=ロイター) 日本経済新聞
たしかに「盗っ人猛々しい」のは事実だ。日本帝国主義による一方的な加害の歴史だからな。まあ普通ならこのような物議を醸すようなことは絶対言わないが。これらの発言は、トランプや日本の政治家・著名人がよくやるような「炎上商法」のようなものではないか。極めて馬鹿馬鹿しい。天皇なんぞが謝罪してどうなるのか。何がどう解決するというのか。
ところで天皇とは今でも外国から、国を代表するような立場であると見られているのだろうか。それも当然かもしれない。日本政府も皇室という機関をそのように扱っているし、今後はより強くそのように扱おうとしている。
そもそも天皇制こそ侵略戦争の元凶であり、天皇が何を口にしても、いや天皇制が現存すること自体が加害の上塗りだ。侵略の継続だ。「解決」や「清算」などあり得ないが、天皇制を廃止することが人民としての進む道だ。
2019年03月04日
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