ある人は「日本に行けば2年間で2千円くらい貯金が出来る」という土建会社の誘いに応じて渡航したが、最初の説明と違って北海道美唄での炭鉱労働だった。拒否したが帰国を許されず、劣悪な環境で重労働を課せられた。日給は5円と聞いていたが実際は3円であり、食費など引かれると手元にはほとんど残らなかった。坑内の爆発事故で多くの同胞が亡くなり、逃げ出そうとした仲間は激しいリンチを受けたという。（朝鮮人強制連行の記録 朴慶植／著 未来社 P-108）
2018年10月30日の大韓民国大法院判決によると、旧日本製鉄による1943年頃の工員募集広告には「2年間技術を習得すれば朝鮮半島の製鉄所の技術者になれる」となっていた。原告の一人はこれに期待して応募したが、実際は技術習得とは縁遠い重労働だった。食事は少なく、賃金が振り込まれる口座の通帳は企業側が管理し、終戦後も返還されなかったという。
また2019年4月4日、強制連行被害者の男性がソウル地裁に加害企業である三菱重工への損害賠償請求を提訴した。この男性は戦時中、タバコなどの専売庁に就職したが（徴用されないという噂があったため）、1944年に専売庁で必要な木材を積み出すためだと騙され、長崎の三菱造船所に送られてしまい、1945年8月の原爆投下で被爆した。
以上のように、日本帝国主義が朝鮮人民を奴隷労働に駆り立てる際、就業条件（労働の場所や内容、賃金）を偽って募集するケースが多かったようだ。もちろん途中で拒否は許されない。
このような不当な拘束は直ちに解かれるのが筋だが、働かせられた分の賃金を受け取る権利はある。日本帝国主義は労働者としての権利も侵害していたのだ。
■ 戦時中の朝鮮人・中国人強制連行政策は、アジア・太平洋戦争に於ける労働力不足を補うものであった。しかしこの政策は企業側の人件費負担を軽くしたであろう。賃金だけでなく労務管理も疎かにされた。何しろ彼らは日本語が出来ない。不遇を訴えることもできない（もちろん多くの労働争議や花岡事件などの実力闘争が発生したが）。企業側にとっては実に好都合だっただろう。日帝にとって強制連行被害者は労働者ではなく、奴隷だったのだ。
こうした様相は、そっくりそのまま、現代日本の「外国人技能実習制度」に当てはまるではないか。「技能」の「実習」とはほど遠い重労働を押し付け、最低賃金以下で酷使する。逃亡を防ぐと称してパスポートを取り上げる。パソコンや携帯など通信の手段すら妨害する。場合によっては契約満了を待たずに解雇し帰国させようとする。しかも彼らは日本語が出来ない。右も左も分からない。搾取されようと虐待されようと、どこに相談したらいいのか全く分からない（実際に建設現場などでは外国人実習生が暴力を受けることも多いと聞く）。資本側にとっては実に好都合な搾取対象だ。しかも彼らは出国時に「送り出し機関」に借金を背負っている。母国政府も日本政府もこれを問題視していないようだが、まるで人身売買ではないか？
しかも彼らは（表向きは）「実習生」だ。一般的な意味での労働者ではない（と扱われている）。だからこそ最低賃金以下での雇用が可能となったのだ。何度も言うが「外国人技能実習制度」とは、外国人に技能を学ばせるのではなく、低賃金で搾取することが目的だ。この奴隷制度を「技能実習制度」などという実態と乖離した言葉で取り繕っただけだ。
･･･話は逸れるが、かつて俺は東京都府中市の東芝府中工場で十数年間派遣労働をしていたが（俺を雇用していた会社から東芝の子会社に派遣され、さらに東芝本社に派遣されるという、トリプル派遣状態）、名目上は「実習」だった。深夜残業、徹夜、休日出勤などザラだったが、東芝にとって俺は労働者ですらなかった。これが資本家の手口だ。
東芝の正社員と同じ負担を課されながら、賃金は大幅に安い。しかしこんな不満を東芝の正社員に漏らすことはタブーだった。彼らが口にするのは、
「お前は違う会社の人間だけど、責任を任されてるんだから、（正社員並みに）しっかりやれ！」
の一点のみ。
もちろん東芝にも正社員の労働組合があり、それなりの活動はしていたようだが、俺のような非正規雇用労働者が不当解雇されようと一切眼中になかった。こうして非正規雇用労働者は正社員を信頼せず、正社員は非正規雇用労働者を（仕事を奪われやしないかと）警戒する。こうして労働者が分断される。外国人労働者の導入はさらに分断を進めるだろう。これも労働者の団結を恐れる資本家にとって実に好都合なことだ。
■ 今どきはコンビニでも定食屋でもどこに行っても外国人労働者に姿が目に付く。既に外国人労働者無しでは日本経済は維持できないようだ。特に農業・漁業、町工場など深刻な人手不足に陥っている現状がある。
社会の基幹産業と言えば何か？大手家電？自動車産業？原発？馬鹿なこと言っちゃいけないよ。食糧を生産するための産業であり、小さな部品など生産する町工場だ。何を作るにも小さいネジがなきゃ作れないだろ。そういった現場が人手不足に悩み、期間限定の外国人労働者に頼っている。技術の継承もままならない。この社会がゆっくりと崩壊していく音が聞こえないか？俺は聞こえるよ。このような基幹産業を保護し発展させるため抜本的な対策が必要だ。
まずは外国人労働者への搾取が目的の「技能実習制度」を直ちに廃止し、日本人労働者の就業支援、それでも効果が無いなら･･･永住を前提とし日本人と同じ水準の賃金を政府が保障した上で、外国人労働者を（家族ぐるみで）招く政策が必要だろう。移民政策とも言うかな。
ところが2018年12月8日、入管法改悪案が成立した（2019年4月1日に施行）。強制連行被害者が事実を突きつけた直後にこの改悪を行うとは大した度胸ではないか。ついに日本政府は「実習制度」などというまやかしをかなぐり捨てて、外国人労働者搾取政策をさらに拡大する方針を示した。労働者不足を補うため外国人を招き入れたい立場であるのに、試験に受かれば5年、場合によっては更新も可能･･･とはふざけた態度だ。永住を前提として募集すべきではないか。
2018年上期には外国人技能実習生がなんと4279人も失踪しているという異常事態だが、この改悪法成立の直前に立憲民主党の有田芳生氏が、法務省集計を調査して明らかになった衝撃の事実を公表した。2015年〜17年で死亡者69人、そのうち自殺6人、溺死7人、凍死1人だという！
溺死は漁業関係のようだが凍死とは何だろうか？想像を絶する事態だ。外国人労働者の立場が如何に過酷であるかを物語っている。戦時中に強制連行された朝鮮人・中国人らが、事故死・病死・餓死または暴力で虐殺された歴史を想起せざるを得ない。この統計には現れないパワハラ・暴力・不当労働行為が常態化しているのは想像に難くない。日本帝国主義による外国人労働者への搾取・虐殺が、戦時中から現代まで延々と継続していると言えよう。
もちろん戦時中の強制連行とは異なる政策だが、労働者の権利を侵害している点は共通している。全ての不当労働行為は、労働者が生きていく上での権利を侵害する、許されざる行為だ。
■ 言うまでもなく経済的に優位な立場にある･･･即ち日帝のような戦前戦後を通じて帝国主義の立場にある国家が、このような外国人労働者への搾取を可能とするのだが、これもいつまで続くのか。
既に日本の労働現場の低賃金と過酷さが口コミで広まっているだろう。誰しもスマホを扱いSNSに興じる時代である。日本だけは敬遠すべき、という共通認識が成立しつつあるかもしれない。そもそも外国人労働者にとって収入面での日本で働くメリットも減りつつあるのではないだろうか。
それに国土が狭く天然資源に乏しい日本が現在のような国際社会での経済的優位をいつまで保てるだろうか。気が付けばガラリと様相が変わるのではないか。いつかは日本人が職を求めて渡航するような時代がやってくるかも。韓国や中国で末端の労働者としてこき使われ、差別されることになるかも。因果応報だな？
そもそも日本では明治以降、多くの労働者が貧困から抜け出すため故郷を捨てて世界中に旅立ったではないか。歴史的に見ればなんの不思議もない。だから現在の外国人労働者の境遇は、近い将来の自分たちの境遇だと覚悟するべきだ。
もっとも既に日本の労働者も生存を脅かされるところまで追い詰められている。非正規雇用の職場が激増し、いつ職を失うか分からない立場だ。労働者をいつでも解雇できるような状況は資本家にとって理想的だ。正社員の雇用を抑制して非正規雇用労働者を求めることの延長線上に外国人労働者の増加がある（もはやまともに人を雇う体力は無いようだな）。
またかつての俺のように派遣元会社の正社員であってもその会社が派遣先との契約を失えば、退職を強要される恐れがある。いま働いているビル管理の現場も同様だ。それにコンビニのフランチャイズ店の店長など、実質的には労働者でありながら「個人事業主」という名目で労働者としての権利を奪われている人々も多い。
即ち全ての労働者は資本家のあの手この手の策略によって騙され、分断され、搾取され、使い捨てにされる立場にある。あらゆる国家も資本家も、我々人民を使い捨ての道具としてしか見ていない。奴らは我々の健康や福祉など責任を持ちたくないのが本音だ。働ける間だけ酷使して用済みになればポイだ。だからこそ我々労働者は国境を超えて団結し闘わなくてはならない。全ての労働の現場で労組を組織しなくてはならない。
戦時中の強制連行政策は戦時動員による労働力不足を解消するために始まったが、元々戦争とは資本家が利益を求めるため始められるものだ。この戦争も大きな惨禍をもたらし破滅に至るまで終わることはなかった。
現在は実際に労働力不足だが、今の世の中は無駄な産業が多すぎやしないか？需要が無いところに無理矢理需要を掘り起こすような･･･。残るのは産廃や食品廃棄物の山だ。しかし目先の利益しか興味の無い資本家にとって大量生産・大量廃棄が望ましい。そうしなければ成り立たないような産業構造になっている。常に消費しろ！消費しろ！消費しろ！の大合唱だ。労働人口が足りなくても足りていてもいずれは破綻する。
このように我々は国家と資本家によって「豊かさに駆り立てられ」、破滅に向かって行進させられている。今こそここから脱する決意が必要だ。社会を動かしているのは我々労働者であるから、我々が全てを変えられる。
それと･･･蛇足というか余談というか･･･「国」という単位に拘っているとどこかで話が苦しくなるぞ。たとえばかつてネトウヨと口喧嘩していて、どうにも話が通じないなあ、と思うことは多いよな。「お前は強制連行と言うが、当時は朝鮮人も日本国民だった。国民に等しく課された徴用だぞ」と奴らは言うが、そういう時は「朝鮮人は侵略戦争・植民地支配の被害者だから日本人への徴用・徴兵と一緒にするな！」と返事していた。
しかし･･･ならば戦時中の学徒勤労動員や物資供出はどうなんだ？徴兵は？一家の大黒柱なのに中国侵略以降に再び徴兵された労働者についてどう思う？「日本人だったから仕方ない」と言えるの？
だからさ、どこの「国」だろうが「国民」だろうがそんなことは全く関係ない、全ての戦争を許さない、全ての労働者人民への搾取・抑圧・人権侵害を許さない、という立場で闘わなくてはならない。この辺の部分はサヨクの皆さんもスタンスいろいろだけどさ、まあ自分の中で整理してから書くことにしよう。
※ 参考：
（2006年12月27日）【農業研修のはずが、「性暴力」 外国人実習生が損賠提訴】
（2006年12月01日）「外国人研修制度」
（2007年03月18日）ベトナム人労働者の給料踏み倒し、社長雲隠れ
（2007年06月26日）奴隷制度が招いた不幸な事件：中国人容疑者に寛大な判決を！
（2008年06月02日）【インド料理店、辛すぎる職場】
（2008年08月17日）外国人労働者はただの道具か？
（2009年05月08日）平成おじさんの甥が中国人実習生から給料ピンハネして訴えられる
（2010年07月26日）中国人「実習生」が過労死、労災認定
（2015年04月05日）外国人労働者を搾取し、使い捨てにしないと成り立たない日本経済 不条理日記
外国人実習生の契約（数年前）。
— 外教 (@yuantianlaoshi) 2015年12月27日
携帯禁止、パソコン禁止、恋愛禁止、一人で外出禁止、男女二人で外出禁止、日本人との交流禁止、日本在住の親戚知人との交流禁止、外泊禁止、違反して帰国する場合渡航費自己負担・損害賠償請求…。 pic.twitter.com/Y726XHhcbQ
（2016年7月8日）資本主義は､もう｢戦争｣でしか成長できない 国内経済 東洋経済オンライン 経済ニュースの新基準
指宿さん「中国からの実習生は激減している。日本はもう世界が憧れるような高い賃金で働けるいい国とは見られていない。日本人はそれが分からないので国境を開くとドッと人が来てしまうと。どんな無茶なことをしても来たがってるから良いという考えでは、もう来てくれなくなる」
— Tad (@CybershotTad) 2017年8月20日
外国人記者は見た pic.twitter.com/tRpkjCMvh6
（2017年12月15日）ガイアの夜明け 外国人実習生を時給400円で働かせていたセシルマクビーの会社が炎上 #ガイアの夜明け - NAVER まとめ
（2018年3月5日）除染作業に技能実習生 ベトナム男性「説明なかった」
（2018年5月28日）ベトナム人「日本で働きたくない。もうあの国には魅力が無い」 sakamobi.com
こういった外国人労働者の労働条件の劣悪さは、日本人労働者にとっても労働条件の押し下げ圧力として労働市場にかかってくる。そういう意味では「かわいそうな外国人問題」だけではなく、私たちの労働条件の問題として連帯し、闘うべき問題だ。
— 斎藤いくま@参議院選挙挑戦!! (@saitou_ikuma) 2018年9月16日
（2018年11月1日）安倍政権で今も増え続ける徴用工…外国人実習生の奴隷制度
ベトナムの知人曰く、今は日本にベトナムの方が行きたがらないと 特に工事現場で働く仕事は福島に送られたり携帯取り上げられて何処なのかわからないタコ部屋に入れられると噂になっているそうです。
— めいたんばあば (@o1VWuTVw8wF9IAd) 2018年11月2日
優秀な人は韓国、アメリカ、中国へ行くので、評判の悪い日本に来てくれるのは他に引っかからなかった人が大半。「韓国行きたかったなあ」と思いながら日本で働いて酷い扱い受けて「やっぱり評判通り最低だな」と思って帰っていくわけです。バカが集まってグダグダいう前に外国人差別何とかしろや。 https://t.co/ZupnlYuuEP
— hiroshi ono (@hiroshimilano) 2018年11月6日
小池議員、外国人技能実習生、一番多いのはベトナム人１２万人
— もとむら伸子(本村伸子） (@motomura_nobuko) 2018年11月7日
ベトナム語に対応できる職員は、何人？
・・・厚生労働省、答えず。
小池議員 “たった１人、しかも週２回”
たった１人、しかも週２回！！！！！
（2018年11月8日）外国人技能実習生が実態を訴え 時給300円で残業
（2018年11月20日）ルポ・技能実習生が「逃げる」ということ（1）「失踪」と片づけていいのか？ 借金漬けの移住労働と低賃金
（2018年12月8日）改正入管法が成立へ 14業種、外国人の就労拡大 日本経済新聞
法務省に請求すると国会審議が終わってから新たな資料を出してきました。外国人研修生・技能実習生でこの8年間（平成22年から平成29年）に死亡したのは174人。20代が118人で、内訳は溺死が25人、自殺が12人、凍死が1人。心筋梗塞、急性心不全、くも膜下出血も目立ちます。過労死の可能性が高いです。 pic.twitter.com/i21WKQIB1O
— 有田芳生 (@aritayoshifu) 2018年12月12日
（2018年12月7日）入管法審議で有田氏指摘 外国人実習生69人が死亡
（2018年12月10日）技能実習生が多数死亡の衝撃。日本で働く外国人はどう思う？
（2018年12月13日）外国人実習生の「死者数」を削除 内閣府所管の機構サイト
（2018年12月26日）【入管法改正決定！】何が変わるの？外国人労働者受入れ制度の動向とは HR NOTE
（2019年4月5日） “相次ぐ勝訴”のニュースに勇気…日帝強制徴用被害者「追加訴訟」進める 政治•社会 hankyoreh japan
（2019年4月18日）福島廃炉に外国人労働者 東電「特定技能」受け入れへ：朝日新聞デジタル
（2019年4月25日）無知につけ込まれる外国人労働者。彼らを救うために元難民の支援者が辿り着いた「答え」＜岡部文吾氏＞ ハーバービジネスオンライン
（2019年4月29日）徴用工問題は解決済みではない。日本の主張の問題点とは! ハーバービジネスオンライン
（2019年5月7日）原発事故処理に外国人労働者「儲けのカラクリ」（青木 美希） マネー現代 講談社（1-4）
