2020年03月12日

【備忘録】八ッ場ダムの治水効果は・・・期待しないほうがいい

 久々に投稿します。コロナウイルスの影響でノットフェスなど様々なイベントが中止・延期となり、東京オリンピックもおじゃんどころか日本経済も世界経済も崩壊に向かっている情勢ですが・・・今更ながら2019年の台風19号について書きますよ。

 あのときの「八ッ場ダムのせいで利根川が決壊しなかった!」などというデマにはあきれたが、なんと安倍の馬鹿が今年1月の「施政方針演説」でそのデマをリプレイする始末。安倍みたいなネトウヨは何度も何度も間違いを指摘されてもほとぼりが冷めればまた同じことを言い出すからなあ。事実かどうかなんて関係ないんだよ。嘘も100回繰り返せば真実になると心得てるのかね?それとも事実かどうか判断する気が全く無いのかも?
 だけど俺みたいに加齢とともに忘れっぽさに拍車がかかってくると、以前言い聞かせてやった内容を忘れちまうからな、備忘録として投稿しとくよ。

 2019年10月1日、八ッ場ダムは試験湛水が開始された。つまりダムが完成したんで水門を閉めて水を溜めるテストをしてみよう、という状態だった。以下は2019年10月17日・東京新聞【こちら特報部】から引用する。下にリンクを貼ったページも参考にした。

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所によると、10月11日午前2時のダム水位は標高518m。しかし10月12日の台風直撃によって13日午前5時には573m、15日午後6時頃には常時満水位583m。貯水率100%になった。
 ちなみに運用上の最低水位は536m。要するに八ッ場ダムはほぼ空っぽの状態だったが、台風19号の豪雨によって満水になったわけだ。さぞかし治水効果があったのかと思いきや・・・そうでもないようだ。
 国交省「水文水質データベース」によると、利根川の栗橋観測所の最高水位は10月13日午前3時過ぎに9.67mだった。だが「堤防整備の際に川の水が流れても耐えられる目安にする計画高水位」は9.9m。
 市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津輝之氏は、栗橋地点の過去の流量データから、台風19号に於けるピーク時の流量は毎秒約1万1700㎥と推計。さらに国交省の資料を分析し、八ッ場ダムが無ければ水位は0.17m上昇していたと算出した。しかも実際の堤防の高さは「計画高水位」よりさらに2mも高い。大した効果では無かったようだ。

 そもそも台風が来る前はほとんど空っぽだったんだぜ。通常の運用だと常時満水位583mを保つ方針だし、「洪水期制限水位」(豪雨が予想される時は事前に水を減らさなきゃなんねえけど発電や水道・工業用水のために最低限キープしたい水位)だって555mだ。
 八ッ場ダムの「総貯水容量」は 1億750万㎥、「有効貯水容量」は9千万㎥だが、「洪水期制限水位」のときの「洪水調節容量」は6千500万㎥だ。だから通常の治水容量は台風19号の際のおおよそ4割減だな。
 もちろん利根川水系にいくつもあるダムの治水効果はそれなりのものだと思うよ。八ッ場ダムだって「洪水調節容量」は6500万㎥、台風19号に於ける栗橋地点のピーク時流量は毎秒約1万1700㎥だから、約1時間半もこの濁流に相当する水量を受け入れることができるじゃん?

 しかし嶋津氏は、 
「国の河川整備計画に沿って河床を掘削していれば、ピーク時の水位を70cmほど下げられたと計算できる。限定的な八ッ場ダムの治水効果に期待するより、計画通り河川を整備することの方が重要だ」
  と指摘する。
 そりゃ川底を掘り下げたり浚渫しても、(ダムの底と同様に)そのうちまた土砂で埋まっちゃってやり直しだろうが、ダムを造るよりはるかに低コストで安全で現実的だな。どうにもお役所というのは効果が無さそうでも予算を思いっきり獲得できる事業を止めたくないんだな。要するにでっかい事業を実現したい。予算をいっぱい獲得して使い切りたい。業者を儲けさせたい。そんで天下り先を確保したい。人民の生命財産なんか知ったこっちゃない。というのがお役所というか政府や資本家の本音じゃねえの?



 無駄と言えば、「スーパー堤防」も壮絶な予算の無駄遣いだ。堤防を高くするのではなく、単純に幅広くする。そりゃ決壊しにくくなるだろうけど越水すれば浸水被害が出るのは同じだ。住民を立ち退かせることになるし、途方もない事業費がかかる。そもそも何百年経ったら完成するのか。
 「そもそもスーパー堤防は純粋な治水事業とは言えない。1980年代になって都市部の開発事業で出た大量の残土の行き場がなくなり、処理する場所が足りなくなる中で発案された。堤防の住宅地側をこの残土でかさ上げして、堤防と一体化して厚みを出すことで、その平らな広い堤防の上を街として再開発するという構想だ」。
 「総工費12兆円、実際の進捗率を当てはめると完成は2200年後」
・・・という壮大すぎる事業だ(笑)
 元国立土木研究所次長の石崎勝義氏は
「ス―パー堤防は越水しても壊れないことになっているが、それはウソ。結局、ちょっとした草や木が生えている所から水で削り取られ、アスファルトが破壊されていく」
 と指摘する。

 京都大名誉教授の今本博健氏は、堤防の補強策として「てっぺんから鋼の矢板を打ち込」む手法を挙げる。
 「頑丈で、まず決壊しない。短期間で簡単にできるし景観も壊さない。費用も百分の一以下だ」
 一方、石崎氏は「アーマーレビー工法」(によって補強された堤防を「フロンティア堤防」と呼ぶらしい)を提唱する。堤防の外側(都市側)を遮水シートで覆い、越水した際の侵食を防ぐ。
 既にこの工法が施工された堤防もあるようだが、しかし、なぜか国交省は理由も示さずにこの工法を取りやめた。その理由として考えられるのは(下にリンクを貼ったページに出てくるが)、ダムが造れなくなるから、つまりこのフロンティア堤防で洪水が防げるのならダムは不要だ!という批判が高まればダム建設が難しくなるから・・・ということだ。
 「いつまでも実効性のないダムやスーパー堤防にすがっていては、今後もっと甚大な被害を巻き起こす。今すぐ本当の治水対策事業に転換すべきだ」(石崎氏)



※ 参考:
◇ 八ッ場ダムの概要 八ッ場ダム工事事務所 国土交通省 関東地方整備局
◇ 台風19号、利根川における八ッ場ダムの洪水調節効果 八ッ場(やんば)あしたの会
◇ 利根川上流ダム群の治水効果をめぐる国交省と専門家の見解(朝日新聞) 八ッ場(やんば)あしたの会
◇ 河道掘削(かどうくっさく) 利根川下流河川事務所 国土交通省 関東地方整備局
◇ 八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか? - 嶋津暉之|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
◇ 利根川における八ッ場ダムの治水効果について 現時点のコメント(2019年10月14日 13時) 水源連
◇ 千曲川はなぜ決壊したのか(上) 弱かった堤防と河床掘削怠ったツケ 水源連
◇ 鬼怒川決壊きょう1年 突然消えた堤防強化策 国交省OB「ダム推進のため」(東京新聞特報面) 八ッ場(やんば)あしたの会
◇ 「スーパー堤防」って何だ、これだ! - Togetter
◇ 高規格堤防整備事業 荒川下流河川事務所 国土交通省 関東地方整備局
◇ 「400年かかる公共事業」の現場をみる〜江戸川区スーパー堤防〜
◇ ダム建設より安価な堤防強化 旧建設省研究所元次長・石崎さん「決壊防ぐ工法、再開を」 2019年11月6日



 せっかくだから、2019年10月13日(台風19号上陸の翌日)のさいたま市内の様子を貼っておくよ。天気がいいからチャリンコで出かけたのさ。
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 当然ながら、いつもはサッカーとか野球やってるグランドというか遊水地も湖と化していた

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 芝川から見沼通船掘へ逆流して道路も冠水

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 これは川口市内の芝川のそば。芝川沿いに流れる細い水路が溢れたと思われる


 そして、腹ごしらえしてから、さいたま市の西側に移動。
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 当然ながら彩湖・道満グリーンパークも完全に水没。写真撮ってないが秋ヶ瀬公園も水没。

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 荒川の堤防の外側にある電波塔(平野原送信所というらしい)の周りがこんなに冠水してた。
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 冠水した水田の向こうに見える立派なハコモノは、サイデン化学アリーナという体育館と、プラザウエスト。台風直撃の翌日だが普通に運営してた

 荒川の支流の鴨川はどうだったかな。いつもはチョロチョロだが大雨が降ると濁流と化したことを憶えている。他にも水路があるし。
 ちなみに鴨川の水面より荒川の水位が高くなれば、そのままにしとけば鴨川に逆流して街が水没するから、鴨川の水をエンジンで駆動する巨大ポンプで揚水して荒川に流すんだよ。どこでも同じことやってると思うよ。
 参考:調節池 荒川上流河川事務所 国土交通省 関東地方整備局
 要するに現代文明というのは石油と電気で成り立っているんだよ。機械とか電気とか信用しないほうがいいよ。何しろ俺のような粗忽者が管理してるんだからね(笑) それはともかくリレー(継電器)が一つ動かなかっただけで、端子の圧着が一本不良だっただけで、恐ろしいことになるよな。そもそも機械室が浸水しちゃったらなすすべもないけど。昔、そういう事故があったような気がする。

 ところでこの近くの埼玉県中央市場も冠水していたらしい。


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 彩湖の上を通る国道299号線(の歩道)より。どこまでが彩湖でどこまでが荒川だか分かんねえだろ。

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 遠くにさいたま新都心

 それにしても去年は日本中あちこちで水害がひどかったね。毎年どんどんひどくなってきてる感じ。地球温暖化がもたらした異常気象だろうな?
 ところでさ俺たち環境破壊先進国の人間はさ、政府や資本家の「消費しろ!消費しろ!」の号令の元、毎日せっせと二酸化炭素を排出しているのに、最近は何だよ、イベント参加自粛しろとか不要不急の外出は控えろとかさ、いつもと言ってることが正反対じゃん?
 海外旅行も行けない、外国人観光客もシャットアウト、イベントも軒並み自粛、ディズニーランドも休園、高校野球のごときささやかな娯楽すら中止・・・これじゃ経済が回らねえよ。
 もっともさ、今までのように資源を無駄遣いして環境を破壊しなきゃ、環境破壊先進国の経済は回らないんだよ。いつまでもこんなの続くわけがない・・・と思っていたら意外と早く破綻が来たな。
 だからもう、今までの俺たちの消費生活は間違っていたことを悟り、これからはどう生きるべきか、どのように次世代に継ぐべきかを、覚悟するべき時だな。
 言うまでもなく、ダムだのスーパー堤防だの辺野古新基地だのオリンピック用の競技場だの、無駄なことばかりに税金を浪費して肝心なことを疎かにする政治を、根底から覆して新しい社会を創らなきゃ、未来は無いよね。
posted by 鷹嘴 at 00:28| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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