2022年11月10日

政治家・安倍晋三の「功罪」のうち、唯一の・・・(1)

 なんでこんなタイトルにしちゃったかというと、皮肉っぽいけど功績もあったという主張を読んだんだよ。それもそうかな思ったんだよ。まあ無数の「罪」しか見当たんないけど。まずは奴がどれだけ世間に害を与えたか振り返ってみるよ。ツイッターに書いた内容に大幅に追加。

 安倍政権によって、教育基本法改悪(第一次政権)、特定秘密保護法、安保関連法改悪、刑事訴訟法改悪、組織犯罪処罰法改悪(共謀罪)など、法改悪と悪法の新設が次々と行われた。
 これらによって・・・アメリカの侵略戦争に自衛隊を参加させ、政権が隠蔽していることを探る者を処罰し、デモの打ち合わせ程度でもテロ計画の疑いで捜査し、司法取引で自白を引き出す・・・という、政権にとって都合のいい体制に近づいたわけだ。
 自民党の連中や保守的なマスコミが「安倍政権の遺産」などと言いたがる気持ちも分かるよ。戦争が出来る国にグッと近づいたからな。そしてこういう政権が、大企業や富裕層を優遇し庶民の生活には冷淡であるのは言うまでもない。
 1990年代半ばからの社会の右傾化と、新自由主義の波の中核にいて、その方向に率いたのが安倍氏だった。富の再分配を重視してきた自民党の伝統を転換させ、自己責任や『小さな政府』を指向し、結果的に社会の分断が進んだ
(中島岳志教授の指摘、7月9日東京新聞より)

 もっとも、大企業を優遇し軍事力を増強し、言論統制し、労働者の権利を奪い、憲法を改悪し、戦前の社会に戻そうとするのは、自民党の既定路線ではないか?そりゃ自民党にも「ハト派」や「護憲派」もいただろう(今は知らん)。しかしそういう筋も全て、憲法違反である自衛隊と日米安保条約の容認どころか強化を狙っていたのではないか?「先の大戦は間違っていた」と口では言うが、ベトナム戦争などアメリカの侵略行為や核実験に毅然とした態度を示しただろうか?たしかに日本の戦争は間違っていた、しかしアメリカの戦争は正しい・・・という立場ではなかったか?
 それに派遣法改悪は小泉政権時代の2003年だ。国鉄分割民営化は1987年、その前年に就職した俺は大企業の工場に派遣されたが、同じような立場でこの工場で働く労働者が非常に多かった。また、初めて共謀罪が国会に提出されたのは2005年。
 要するに、「安倍政治」は安倍一人で作ったもんじゃないよ(笑) 安倍の政治信条と「新自由主義の波」というか以前から自民党と財界が目指しているモノが一致し、その策動の「中核」となった。
 もちろん安倍自身に何かの能力があったとは思わない。神輿にされてたんじゃねえの。それに「カリスマ性」などカケラもない(笑)  それこそカリスマ性を言うなら小泉のほうがよっぽど危険だ。安倍の滑舌の悪さ、内容の無い発言、常に不安げな表情が有権者に好印象を与えるわけがないよな?
 要するに一般の人気を集めた政治家ではない。野党が頼りないから自民党に投票するしかない、別に安倍を好きじゃないけど、まあいいか・・・という有権者も多かったようだ。それに奴が首相であるというだけの理由でなんとなく支持するという、日本人の情けない醜い心理も働いていたのかも。
 もちろん岸信介の孫であり、その政治的な信条?がいわゆる「保守層」から根強い支持を得ていたことは確かだ。その家柄の良さ(笑)が災いして担ぎあげられ、自民党政治への批判の矢面に立たされ、挙句の果てに自分も想定していなかったであろう方面の怒りを買って殺されるとは、まあ哀れと言えば哀れだけど・・・もっとも安倍だってただの神輿じゃなかったよな。自分なりの主張をいろいろと反映させたかったようだな・・


 安倍の言動については、「こんな人たちに〜」みたいなアドリブ(笑)だけでなく、事前に作られたものを読み上げただけ、あるいはサインしただけのはずの内容にも唖然とさせられた。
 たとえば東京五輪招致のときの
 「フクシマの状況は統御されている」とか、
 「東京には今後も悪影響はない」とか、
 こういうトンデモないことをよく言えたもんだよ。
◇ オリンピック東京プレゼン全文、安倍首相や猪瀬知事は何を話した?(IOC総会・プレゼン内容) | ハフポスト NEWS
 こういう演説内容は、発言を読み上げる者が自分で考えるわけではなく、誰かが原稿作るんだろ?渡されたら事前に目を通すよな、自分で読み上げるんだから。変だと思わなかったのか。いや、むしろ原稿を作る側が安倍に忖度して、こういう内容になったのかも?


 それに安倍談話というのは、西洋の植民地支配の危機感がどうのとか、日露戦争の勝利がアジアやアフリカを勇気づけたとか、ネトウヨの下手な作文レベルだな。(使い古されたコピペだが、インドの初代首相となったネルーも最初は日本の勝利に歓喜したが、その後は日本の台頭を醒めた目でみてたってね)
 日露戦争が侵略戦争じゃなかったら何なんだよ。1931年からの中国東北部侵略以前の侵略については言及してねえし。
 「経済のブロック化で打撃を受けた」とか、「行き詰まりを力によって打開しようとした」って、なんだか被害者みたいな言い草だな。まずは中国への侵略を止めればよかった、中国東北部の傀儡政権「満州国」を解体すればよかった、とは言いたくないんだね。
 中国やアジア各地、「太平洋の島々」で「食糧難などにより多くの無辜の民が犠牲になった」と書いてあるが、「など」って何だよ。ゲリラの疑いで虐殺したことも書けよ。
 「深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいた」ともあるが、日本兵による強姦、及び日本軍が設置した強姦所があったとはっきり書けよ。
 最後のほうの「価値を共有する国々と手を携えて積極的平和主義」とあるが、ならば価値を共有しない国々にたいしては、積極的なんちゃらを発揮するんだろうか。先制攻撃ですか?
◇ 「積極的平和主義」の認識に関する質問主意書:質問本文:参議院
 もちろん安倍自身が書いたわけではないだろうが、よくもまあ、自分の名前でこんな恥ずかしい作文やらせたもんだな。安倍が注文つけたか、それか書いた奴が忖度して、こうなったのか。


 もともと安倍がどういう思想の持ち主なのか明白だ。忘れてはならないのがNHK番組改変問題だ。
◇ 永田浩三さんに聞いた:NHK「番組改変」と「慰安婦」問題の今
自民党にはトンデモない奴がいると知って驚いたね。まさかこんな奴が首相になるとは思わなかった。
 それに、7月21日・東京新聞【こちら特報部】を見て思い出したが、2015年の「日韓合意」の直後、安倍は韓国側から戦時性暴力被害者への「おわびの手紙」を求められたが、「毛頭考えていない」・・・と言い放ったな。ひとこと「考えていない」って言えばいいのに、なんで「毛頭」をつけるの。
 「首相になる前から、従軍慰安婦の問題を取り上げたNHKの番組への介入が取り沙汰されるなど、日本の戦争責任について一貫して修正する立場を示してきた」
「戦争を知らない世代ゆえ、いまの日本に誇りを持ちたいという気持ちが過去を美化する願望につながった」(大阪公立大学明戸隆浩准教授、同上)


 韓国の法廷で強制連行被害者が勝訴したとき安倍は、「原告は、徴用ではなく募集されていたため、(政府は)『徴用工』ではなく旧朝鮮半島出身労働者問題と言う」などと言い出したが、徴用ではなく「自由募集」や「官斡旋」の段階でも奴隷狩り的な連行もあったことを知らんのか。
◇ 安倍首相「原告は徴用工ではない」「国際裁判も視野に対応」 - zakzak
◇ 安倍首相「原告は『徴用』でない『募集』に応じた」…韓国の判決を全面否定 | Joongang Ilbo | 中央日報
 もちろん自分の意思で応募しても、最初の説明と待遇が全然違う、虐待される、帰国させてくれない・・・という状況は、いくら安倍でも想像できそうなものだが。外国人技能実習制度のように。そもそも「徴用工」という言葉自体、奴隷狩り制度の実態を覆い隠そうとする卑劣な造語だが。

 この件についての日本政府の愚かさについいては以前にこのブログに書いた。それとこの時、半導体関連素材の韓国への輸出審査を厳しくしたよな。日本は「輸出立国」のはずなのに輸出を制限してどうするのか。こんな嫌がらせをしているうちに他国にシェア奪われるよ。奪われつつあるようだね。
◇ <社説>週のはじめに考える 半導体は平和に通ず:東京新聞 TOKYO Web
◇ 【社説】半導体材料 不都合な現実も直視を - 化学工業日報


 世界遺産に登録された軍艦島での強制労働の事実をムキになって否定していたな。佐渡島金山の推薦も安倍らの圧力があったようだ。
◇ 安倍氏、佐渡金山「論戦避け申請しないのは間違い」 - 産経ニュース
 これは前にも貼ったけど佐渡金山の実態。
◇ 佐渡鉱山と朝鮮人労働者(1939〜1945)
 軍艦島への強制連行についてもちょっとググればすぐ出てくるのにね。
◇ 長崎と朝鮮人強制連行
 そもそも「明治日本の産業革命遺産」ってなんだよ。アジア侵略を美化してるようなものだ。


 首相がこんな奴だから、それに感化される連中が増えて当然だ。
 俗にいう保守というか右翼というか歴史修正主義というか・・・そういう呼び方はともかくさ、侵略戦争や植民地支配の美化、それ自体がヘイトだろ。
 「〇〇国は我が国に侵略されて被害を受けた・・・と言っているがそれはウソだ!」「侵略ではなくて、併合してやったんだ。いい統治をしていたんだ」「だから〇〇国の奴らは嘘つきだ、汚い奴らだ」
 という展開になるだろ。それとも、差別感情が根底にあって、歴史歪曲を思いつくのかもね。
 安田浩一氏は、安倍が使っていた「歴史戦」という言葉について、次のように述べる。
 歴史を戦いの道具としたことで、近隣国との過去を見ることを妨げた。その結果、ヘイトスピーチにはまり込む面々も過去を直視せず、憎悪の言葉を繰り返した。
 安倍氏は社会にナショナリズムの熱を与え、保守層は攻撃の矛先をマイノリティーに向けた。これは安倍氏の負の遺産だった。(7月21日・東京新聞【こちら特報部】より)
 だから、飲み会どころか喫煙所で雑談してるだけでもヘイトを吐いてきやがる奴が増えてくる。そりゃ以前からアニオタはネトウヨ率高いなと感じていたが、ただのノンポリorリア充志向な奴だと思ってたのに、
 「日本は韓国にいいことをしてやった」「日本は韓国にたっぷり賠償してあげた」(じゃなくてひも付き援助だぞ)
 とか、昔だったらネトウヨしか言わないことを言い出すし。暴力を伴うヘイトクライムではなくても、こういう言葉は差別を受ける側の人々を苦しめ続ける。という当たり前のことは俺でも理解できるぞ。
 もちろん安倍政権以前から世間にヘイトが溢れていたが、安倍政権になって更に過熱した。ヘイトが日常的になった。メディアも自治体も政権に忖度し、平和運動や日本の侵略戦争への言及に及び腰になった。安倍は想像しうる最悪の政治家として記憶されなければならない。
 それに安倍政権が世間に悪影響を及ぼしたのはこれだけじゃない気がする。
 (つづく)
posted by 鷹嘴 at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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