2024年10月03日

「イスラエル人よりも、ハマスの活動家のほうが、古代ユダヤ人の子孫である確率は高いだろう」・・・【ニュース拾い読み(5)+人様のツイートをパクリ】

 2023年10月7日から、あと数日で1年。イスラエルによるガザ市民虐殺は未だに続いている。
 8月10日には避難所となっていた学校を爆撃し100人以上を虐殺。8月14日には、夫が役所に出生届を出しに行っている間に妻と二人の新生児を爆撃で虐殺した。(このニュースは誰しも、心を痛めるどころではない衝撃を受けるだろう)
 8月27日には国連の世界食糧計画(WFP)の車両が銃撃されたため、支援物資搬入を一時見合わせることとなった。こういうケースが再三あるから故意に思える。イスラエル側はミスだと釈明するが、国連のマークがついているのにミスがあるか。支援活動を委縮するつもりではないか。
 しかもヨルダン川西岸では入植者のパレスチナ住民への暴力が激化。家屋や車への放火、銃撃を行い犠牲者が出ている。銃殺事件についてはさすがにイスラエル政府も「厳格」に捜査すると述べているが、本気で取り締まる気があるのか。そもそもイスラエル軍がテロ掃討と称して住民も国連職員も虐殺し、道路や水道施設などインフラを破壊している。ヨルダン川西岸からもパレスチナ人を追放するつもりなのか。
 一方イスラエル国内では、刑務所でパレスチナ人に性的暴行を加えて逮捕された兵士らを「釈放せよ」「レイプする権利はある」、などと主張する極右の暴動が発生した。しかも閣僚がレイプ犯を「賞賛」しているという。こいつら全員頭のネジが外れているのか?ヤバい薬をキメてるのか?

 なぜイスラエル国とその国民はこのように残虐で、かつその残虐性を誇るのだろうか。もしかしたら他の人類とは根本的に何かが異なっているのだろうか・・・などと言うのは無意味すぎるし、単なる差別だ。シオニストを批判できなくなる。日本も最近ヘイトが激化しているように見えるが、この列島でも有史以来、差別と虐殺に満ちているではないか。これが人間の本性だと言ってしまえばオシマイだが。
 国民性や民族性などと言ってはダメだし、意味がないよ。そもそもイスラエルという国は大半がユダヤ人だが、それは欧米各国からの移民と、アラブ系の人々など、多様なルーツの人々で構成されているではないか。


 常識だろうけどあえて言うよ、「ユダヤ人」(Jews)という人種、民族は存在しない。かつてユダヤ人は鼻に特徴がある、などという偏見がまかり通っていたようだが、それこそレイシズムだ。(参考)
 元々は「ユダ部族の者」、「ユダの住民」という意味だったが、徐々にユダヤ教の信者を総称する意味となった。 「ユダヤ教徒のエスニック集団」の中にいればユダヤ人と見なされるが、その集団の中にあっても、必ずしも一人残らずユダヤ教徒、というわけではない。 イスラエルの定義はこれより厳しく、「ユダヤ人とは、ユダヤ人女性を母として生まれた者かユダヤ教徒に改宗した者で、他の宗教の一員ではない者」とされている。以上は「ユダヤ人とイギリス帝国」(度会好一/著 岩波書店)より引用。
 ざっくり言えば「ユダヤ人」とはユダヤ教徒のことだ。俺もユダヤ教に改宗すれば「ユダヤ人」と認められて、イスラエルに住めるのかな?住みたくないけど。
 当然、人種も様々だ。
 東欧系の「アシュケナジム」(Ashkenazim)、
 南欧系のセファルディム(Sephardim)、
 中東や、カフカス(コーカサス)以東に住んでいたミズラヒム(Mizrachim)に分類される。

 しかしメディアに登場するイスラエルの政治家や著名人は、ヨーロッパ系の人々ばかりだよな。だからユダヤ人ってヨーロッパ系の人々なんだ。という恐ろしい誤解を招いているかもしれない。招いているよな。
 (なお外務省のイスラエル国に関する「基礎データ」によると、イスラエルの人口は約950万人、ユダヤ人は約74%、 アラブ人は21%。宗教はユダヤ教が約74%、イスラム教は約18%、キリスト教は約2%)

 ところで歴史上最も有名なユダヤ人と言えば?マルクスよりアインシュタインより有名な人がいるよ。ユダヤ人は2000年前にディアスポラ・・・つまりローマ帝国によってパレスチナの地を追放され、さまよえる民となった、と言われているが、そのころ生きていた人。Jesus Christだ。日本語で言えばイエス・キリストだ。
 その当時のパレスチナに住んでいたユダヤ人はどんな顔立ちをしていたかというと?キリストが住んでいた地域から発見された、その時代の人物と思われる頭蓋骨から再現してみると!
◇ 【寄稿】イエス・キリストの本当の姿は? 長髪にひげは本当か - BBCニュース
 浅黒くて迫力のある兄さんだな。頭巾とかマスクとか被せてみたら、反イスラエルの戦闘員みたいに見えるかな?自動小銃片手に気勢を上げるとこ見たいな。どう見てもヨーロッパ系ではない、アラブ系の顔立ちだな。

 要するに当時のパレスチナにヨーロッパ人が住んでいたわけがない。現在の基準で言えばアラブ系と呼ばれるような人々が住んでいた。当たり前だよ。もちろん当時のユダヤ教徒もそういう民族だった。ところが後のヨーロッパ世界では、キリスト像がまるで白人のような顔立ちに描かれていった。
◇ イエス・キリストが白人として描かれた理由は、現代でも対立の根底に(宇山 卓栄) | +αオンライン | 講談社(1/3)

 だったら、「我々は2000年前に追放されたから戻る権利があるんだ!」って言ってイスラエルを建国した奴らってなんなの。お前ら白人じゃん。お前らの祖先が2000年前にパレスチナに住んでたわけないじゃん。
 実際、イスラエル国はヨーロッパ系の人々が最も多いようだが、それはもちろん、建国の前からシオニストが移民を送り込んだからだよ。


・・・というわけで、やっとこの投稿の本題。中東ジャーナリスト川上泰徳氏によるツイートのパクリ。ちなみに川上氏の新書「ハマスの実像」を読み始めたところ。
 川上氏が、2010年にテルアビブ大学のシュロモ―・サンド教授にインタビューした内容をツイートしている。イスラエルでベストセラーになった「ユダヤ人の起源」の著者だ。非常に長文なので、勝手に要約させていただく。 「我々は2000年前にローマ帝国によって追放されたユダヤ人の子孫だから、帰還する権利がある!」というイスラエル建国の口実を木っ端微塵に砕いている。なお教授は幼いころオーストリアからイスラエルに移住したユダヤ人である。

● 教授はディアスポラ(ローマ帝国によるパレスチナからのユダヤ人追放)について調査したが、それを伝えるユダヤの歴史書は全く存在しない。イギリス人によるユダヤ人追放についての著書があったが、それはローマで、ユダヤ教への改宗者が増えすぎたため、「ユダヤの地」に追放された件だった。

● かつての教授は、ディアスポラを疑うことはなかった。もっとも左派グループ「マツペン」に属していた教授は、「ユダヤ人は2000年前に追放されたが、現在パレスチナに1300年以上住んでいる人々より、権利があると主張するのは愚かだ」と思っていた。

● 2000年前のディアスポラを立証できないため、7世紀にアラブ人によって追放された、と推論するシオニズム系の歴史家がいるが、そのような記録はない。しかしその時ユダヤ教からイスラム教に改宗した人々も多かったと思われる。

● その7世紀にパレスチナに住んでいたキリスト教徒やユダヤ教徒は、自然とイスラム教徒に改宗したと思われる。ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も一神教の宗教だが、当時のユダヤ教徒にとってイスラム教徒のほうが抵抗感が少なかっただろう。しかもアラブ人の宗教を受け入れれば人頭税を払わなくて済む。多くの農民がユダヤ教からイスラム教に改宗しただろう。(これについては川上氏の別のツイートに補足あり。「改宗」という意識すらなかったのではないか、とのこと)

● もちろん、アラブ人も様々に混血しているから、現在のパレスチナ人がそのまま、古代ユダヤ人の子孫だとは言えない。しかし私(オーストリアで生まれたユダヤ人であるシュロモ―・サンド教授)よりも、ハマスの活動家のほうが、古代ユダヤ人の子孫である確率は高いだろう。

● イスラエル初代首相のベングリオンも、それを理解していた。他のシオニストの中にも理解していた者がいた。しかしベングリオンはイスラエル建国宣言の起草に「ユダヤ人はこの地から追放された」と記した。それがイスラエル建国の正当性を与えるからだ。

● かつてユダヤ教徒はヨーロッパで積極的に布教をしていた。ユダヤ教徒である兵士や戦争捕虜や移民が、各地で布教していたのだ。ローマ人がユダヤ人を奴隷にすると、連れていかれた先で布教しユダヤ教を広めた。ローマ帝国がキリスト教を採用し布教を禁じるまで続いた(信仰自体は許された)。イスラム教が根付いた地域でも布教は止まった。
 しかしキリスト教やイスラム教などの「一神教」が支配していない地域では布教活動が続いた。黒海とカスピ海の間で13世紀まで存続したハザール王国はユダヤ教を国教としていた。だからロシアや東欧にユダヤ人が多いのだろう。(補足あり)

● 教授はもともと反占領・パレスチナ国家樹立を支持していたが、特に反発を受けることはなかったという。しかしこの、イスラエルで19週間ベストセラーになった本を出版した後、「シオニストの歴史家たちの反応は最悪」だった。話しかけないどころか目さえ合わせない。教授に殴りかかろうとした者もいた。しかしメディアでは好意的に取り上げられた。ひどい脅迫も多数受けたが、激励の方が多かった。

● ある女性に「私は古代ユダヤ人とつながりはないのか?だったら私は自分がここにいることを正当化できるのか?」と問われた教授は、「文化的なつながりならある。ユダヤ教はイスラムを含めて、西洋文明の基礎となった」「しかし、シオニズムはユダヤ教徒のための国家を作ろうとしたが、宗教では国を所有する権利はない。だから民族としてのユダヤ人をつくった。それがシオニズムの秘密です」
 つまりシオニストはイスラエル国の建国に正当性を持たせるため、無理矢理「ユダヤ人」という民族が存在すると、でっち上げたわけだ。

● アメリカに住むユダヤ人の精神分析医は教授に、「私の患者たちがこの本を読めば精神的な問題はずっと少なくなるだろう」という手紙を送った。教授は、「彼は、自分も普通の人間なのだ、と感じたのだろう」と語る。
 「ユダヤ人は、古代ユダヤ人の子孫という特殊性はない。かつてヨーロッパや北アフリカやロシアで、ユダヤ教に改宗した人々である。彼はそれを悟って安心したのだろう」

・・・教授の著書は多くのイスラエル国民のアイデンティティを揺るがしたのだろう。彼らには、自分は2000年前にパレスチナで生きていた人々の子孫だという思い込みがあり、これを否定できない。教授は次のように語る。
 「ユダヤ系イスラエル人が中東で未来を望むならば、自分たちには古代のユダヤの民の子孫だという誤ったアイデンティティーから脱却して、アラブ人とともに国づくりをするような未来をつくらねばならない」
 「シオニストの夢想を砕けば済むわけではない。この国で生まれた世代はここにいる権利がある。歴史に過ちがあっても歴史を戻ることはできない」
 さて、イスラエル国とその国民は、「アラブ人とともに国づくりをするような未来」を選択できるだろうか?



・・・勝手に補足。ハザール王国に住んでいたユダヤ人がアシュケナジムとなった、という考察は、遺伝子研究によって否定されたという。ウィキペディアの項目「ハザール」より。
 さらに別の研究だが、たとえばA国に住んでいるユダヤ人と、遠く離れたB国に住んでいるユダヤ人に、遺伝子の共有が見られる。A国のユダヤ人とA国の非ユダヤ人を比較するより、A国のユダヤ人とB国のユダヤ人のほうが、遺伝子の共有が多い、という。しかもその共有する遺伝子は「レバント起源」・・・つまり地中海東岸、現在のイスラエルを含む地域を起源にしているという。ウィキペディアの項目「シュロモー・サンド」の英語版より。

 たしかに、ヨーロッパ各国で布教していたユダヤ教徒たちが一代で絶えたわけではなく、同じユダヤ教徒と、または新たに改宗した人々と子孫を残したのかもしれない。離れた国に住んでいるユダヤ教徒に遺伝子に共有が見られても不思議はないだろう。
 もちろん現在のパレスチナ人のほうが古代ユダヤ人との遺伝的なつながりが深いだろうが、現在のイスラエル国民も、古代ユダヤ人の遺伝子をごく薄く受け継いでいるのかもしれない。だからシュロモー・サンド教授は(パレスチナ人のほうが)「確率は高い」と述べたのだろう。この遺伝子研究によってシオニストが何か言い始めても、シオニストがパレスチナ人排除の不当性が際立つだけだ。

 ユダヤ教徒たちは現地の人々と子孫を残すことによって、ユダヤ教を後世に残せたのだろう。次のような研究もある。
◇ 【遺伝】アシュケナージ系ユダヤ人の母方の系統の起源がヨーロッパである可能性が浮上 | Nature Communications | Nature Portfolio
 「アシュケナージ系ユダヤ人のミトコンドリアDNAの変異の少なくとも80%が、中近東やコーカサス地方ではなく、先史時代のヨーロッパの系統を受け継いでいる」・・・さっぱり分らんが「ヨーロッパの地元の女性が動員されて、改宗したことがアシュケナージ系ユダヤ人コミュニティーの形成にとって重要だった」、つまりヨーロッパ人と混血したわけだ。

 現代のアシュケナジムが古代ユダヤ人と生物学的なつながりは全くない、というわけではなさそうだが、自分が国家あるいは特定の民族の一員であることでアイデンティティを保つというのは悲しいものだな。シュロモー・サンド教授が言うように、国家や血統ではなく「文化的なつながり」に誇りを持ち、国家や民族といった「まやかし」から自由になるべきだ。つまりシオニズムから脱却するべきだ。



 【参考】
(2024年7月16日)イスラエル人の入植者が水源奪い、パレスチナ住民の追い出し図る…ヨルダン川西岸で16集落消滅

(2024年7月31日)集団レイプ容疑者の解放求め暴動、閣僚の関与の疑いも―イスラエル(志葉玲) - エキスパート - Yahoo!ニュース

(2024年8月10日)イスラエルがガザの学校を空爆 100人以上死亡 住民らの避難場所 | 毎日新聞

(2024年8月10日)ガザ地元当局「学校をイスラエル軍が空爆 100人以上死亡」 | NHK | イスラエル・パレスチナ

(2024年8月14日)生後4日の双子が空爆で死亡、父親が出生証明書を受け取りに行っている間に……ガザ地区で戦闘続く - BBCニュース

(2024年8月15日)出生届提出直後に空爆、生後3日の双子と母親が死亡 ガザ 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

(2024年8月16日)ユダヤ人入植者が町を襲撃、イスラエル当局トップら非難 ヨルダン川西岸 - CNN.co.jp

(2024 年 8 月 28 日)ガザ地区全域で職員の移動を一時停止ー国連WFP車両の銃撃を受け | World Food Programme

(2024年8月29日)世界食糧計画、ガザでスタッフの移動を一時停止 支援車両が銃撃受け - BBCニュース

(2024年8月30日)ガザの国連車両銃撃は「通信ミス」、イスラエルが釈明=米代理大使 | ロイター

(2024年9月11日)イスラエルがヨルダン川西岸空爆、少なくとも5人死亡 作戦継続 | ロイター

(2024年9月14日)イスラエル軍、ヨルダン川西岸で軍事作戦 国連職員含む10人死亡 - CNN.co.jp

(2024年9月19日)国連 イスラエルに占領状態終わらせるよう求める決議 採択 | NHK | 国連

 なお1967年の第三次中東戦争でイスラエルはガザ地区、東エルサレム、ヨルダン川西岸、シナイ半島、ゴラン高原などを占領。これを受けて国連安保理決議242はイスラエルの占領地からの撤退を求めた。しかしイスラエルは未だに東エルサレムとヨルダン川西岸を占領し、入植地を建設し分離壁を張り巡らせている。
◇ 中東 | 国連広報センター

(2024年9月23日)ヨルダン川西岸でパレスチナ人住宅500軒以上破壊…イスラエル極右政党の意向反映か(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
posted by 鷹嘴 at 14:17| Comment(0) | TrackBack(0) | パレスチナ情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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