2025年04月05日

東アジア反日武装戦線には、どういう目的と信念があったのか?

 桐島聡さんが亡くなって1年以上経ち、映画「逃亡」が公開された。7月には「桐島です」が公開予定だという。
 しかし「逃亡」は、東アジア反日武装戦線について関心が無かった人にはピンとこない部分もあるだろう。桐島さんと同時に逃亡し、神社で落ち合っていた人は?毒を飲んで自殺した人は?知ってるわけないよね。
 そういう俺も知らぬも同然なので、いまさら情けないがウィキペディアその他から簡単に整理してみる。


 東アジア反日武装戦線には「狼」「大地の牙」「さそり」という3つの部隊があった。

 「狼」の主な闘争としては、三菱重工爆破攻撃。主なメンバーは、
 ・大道寺将司さん ――1987年死刑確定、2017年東京拘置所で病死
 ・大道寺あや子さん ――1977年ダッカ日航機ハイジャックで超法規的措置により出国、日本赤軍に合流
 ・佐々木規夫さん ――1975年8月、クアラルンプール事件で、超法規的措置により出国、日本赤軍に合流
 ・片岡利明(益永利明)さん ――1987年死刑判決、東京拘置所に収監中、脳梗塞の後遺症で意思疎通が困難

 「大地の牙」の主な闘争は、三井物産、大成建設、間組、韓国産業経済研究所、オリエンタルメタル製造への爆弾攻撃。主なメンバーは、
 ・斎藤和(のどか)さん ――1975年5月、浴田由紀子さんと同居していた自宅に権力が踏み込み、逮捕される直前に青酸カリで服毒自殺
 ・浴田由紀子さん ――斎藤和さんと同様に青酸カリを飲むつもりだったが権力に妨害された。1977年のダッカ事件で超法規的措置で出国、日本赤軍に合流。1995年ルーマニアで拘束、日本に連行される。2004年5月懲役20年が確定、2017年に出所
 なお浴田さんは、出所後に「マコの宝物」を出版。

 「さそり」の主な闘争は、鹿島建設や間組への爆弾攻撃。主なメンバーは、
 ・黒川 芳正さん ――1975年逮捕、1987年無期懲役確定、宮城刑務所に収監中。1987年獄中から映画「母たち」の監督を務める。なお権力は、黒川さんが所持していた鍵から宇賀神さんと桐島さんを把握した。
 ・宇賀神寿一さん ――1982年に逮捕。1990年懲役18年確定、獄中で21年を闘い2003年に出所。救援連絡センターで活動中
 ・桐島聡さん ――宇賀神さんと同時に潜伏し、以後音信不通。「内田洋」という名前で生活し、2024年1月、死の直前に自分の本当の名を明かした。
◇ 〈桐島聡と逃走した男・独占インタビュー〉東アジア反日武装戦線「さそり」元メンバー・宇賀神寿一が語る「闘争の原点」と「さそり結成まで」 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け
 (一部を引用)「自分は、桐島聡」「最期は、本名で迎えたい」――今際の際で、男性はそれだけを伝えた。この世における、最期の言葉として。そして4日後に、息を引き取った。
 
 今年1月25日、「桐島聡」の名が一気に全国を駆け巡った。「東アジア反日武装戦線」というワードが降って湧いたように世に浮上し、「三菱重工爆破事件」がいかに悲惨であったかがお決まりのように語られ、「間違ったことをしたと、自分の人生を明確に否定してほしい」と、事件の遺族の声までもが拾い上げられもした。

 だが、桐島さんはそもそも、「三菱爆破」(1974年8月30日)には一切、関わっていなかったし、逮捕容疑とされた「韓国産業経済研究所爆破」(1975年4月19日)にも関わっていなかった。

 「三菱」は東アジア反日武装戦線「狼」の犯行であり、「韓産研」は同「大地の牙」によるものだ。東アジア反日武装戦線には3つの部隊があり、桐島さんが所属していたのは、最後に闘争に参加した「さそり」だ。

 「さそり」が行なった爆破闘争は、1974年12月23日の「鹿島建設資材置き場」、1975年2月28日、3部隊合同作戦での「間組本社」、4月28日の「間組江戸川作業所」、5月4日の同・江戸川作業所でのコンプレッサー爆破の4件、わずか半年にも満たない闘いだった。


 ところで、もし俺が60年代後半から70年代前半にかけての大学生だったら?もちろんヘルメットかぶってゲバ棒かついで暴れていただろう。しかし東アジア反日武装戦線にオルグされても参加しないよ。爆弾闘争には共感できない。三菱重工爆破攻撃で多くの労働者が犠牲になったではないか。全ての労働者は、資本家と帝国主義国打倒のため団結しなくてはならない。
 そんな彼らは何を目的にして、どんな信念で闘っていたのか。「腹腹時計 都市ゲリラ兵士の読本 VOL.1」が、この疑問を解くヒントになるだろうか。「でもわたしには戦が待っている 斎藤和[東アジア反日武装戦線大地の牙]の軌跡」(風塵社)から引用。(もちろん実践編は掲載されていない!)まずは基本的な心得を列記した部分から。

 職場に於いて
 別に明確な目的を持たずに現在の職場に就いている場合、組合などで極左的に、原則的にゴリ押ししないこと。経営者はすぐにタレこみする。
 居住地、職場とも共通なことは、極端な秘密主義、閉鎖主義に陥らぬことと、左翼的粋がりを一切捨て去る、ということである。挑発で、ヒゲをたくわえ、米軍放出の戦闘服などを着た「武闘派」がいるが、それは偽物であり、危険極まりない男であると判断すべきである。
 たしかに職場で闘っていると権力が介入してくる場合も多いだろう。関西生コン支部への弾圧のように。「ゲリラ兵士」は目的が違うからな。
 しかし、ロン毛でおヒゲのお洒落な人は、たまにデモや集会で見かけるな。みんなニセモノで危険ってことはないだろ。要するにここで言いたいのはサヨクっぽいファッションなんぞ無意味ってことだよね、了解しました。「危険」というのは、ゲバルト大好きって意味ではなく、何かあったら裏切る、権力に売り飛ばすという意味合いだろう。

 合法的左翼との関係について
 職場に於いて、学校に於いて、居住地に於いて、彼らとの関係は原則的に厳禁である。彼らの圧倒的大部分は、徹底的に質が悪い。口も尻も軽すぎて、全く信用できぬ代表的部分である。
 よく知ってるな。たしかに俺のような「合法的左翼」は、ツイッターでも飲み会でも人のうわさ話や、他の団体への批判が大好き。かと思えばあっちについたらこっちについたり。ごめんなさい返す言葉もありません。ゲリラ兵士にとって全く信用できない連中だろう。

 更にいくつかの基本的注意
 ゲリラ兵士は酒は飲まぬ。酒は平常心を失わせ、羽目を外し、油断を生じ易くする。これは、ゲリラ兵士にとっての最大の敵である。特に、何人か集まっての酒盛りは厳禁である。それは、合法左翼の専売特許であるべきだ。
 喫茶店を利用するのは、充分の配慮が要求される。よく、団体で長時間、左翼系出版物を裸で携行し、ノートを広げて、学生活動家得意の用語を駆使して、口角泡を飛ばしているのに出くわすが、あれはみっともないし、絶対にまずいので、われわれはそれをタブーとしなければならない。総じて、喫茶店の使用は注意すべきである。私服がゴロゴロしているし、過去、それによって敗北した例も沢山あるのだから。
 俺たちがいつもやってることだな。デモや集会の打ち上げで、テーブルに機関紙や貰ったチラシを広げて大声で議論してるぞ。言われてみれば恥ずかしくなる。たしかにみっともないし、私服がいないとも限らないが、爆弾闘争の計画を練っているわけではないし。これが「合法左翼の専売特許」だ(笑) しかし「△さんの会社はどこ?」「〇さんは、次の集会行ける?」みたいな会話は小声でするべきかも。

 以上、合法酔っ払いお喋り尻軽サヨクにとって耳の痛い話だが、「日本帝国打倒を志す同志諸君」への「いくつかの問題の提起」には、共感できない部分が多い。

 1
 日本帝国は、36年間に及ぶ朝鮮の侵略、植民地支配を始めとして、台湾、中国大陸、東南アジア等も侵略、支配し、「国内」植民地として、アイヌ・モシリ、沖縄を同化・吸収してきた。われわれはその日本帝国主義者の子孫であり、敗戦後開始された日本帝国新植民地主義侵略・支配を、許容、黙認し、旧日本帝国主義者の官僚群、資本家共を再び生き返らせてきた帝国主義者本国人である。これは厳然たる事実であり、すべての問題はこの認識より始めなくてはならない。

 2
 日帝は、その「繁栄と成長」の主要な源泉を、植民地人民の血と累々たる屍の上に求め、更なる収奪と犠牲を強制している。そうであるが故に、帝国主義本国人であるわれわれは「平和で安全で豊かな市民生活」を保障されているのだ。
 日本帝国に於ける労働者の「闘い」=賃上げ、待遇改善要求などは、植民地人民からの更なる収奪、犠牲を要求し、日帝を強化、補足する反革命労働運動である。
 海外技術協力とか称されて出向く「経済的、技術的、文化的」派遣員も、妓生を買いに韓国へ「旅行」する観光客も、すべて第一級の日本帝国侵略者である。日帝の労働者、市民は植民地人民と日常不断に敵対する帝国主義者、侵略者である。
 たしかに我々は「帝国主義者本国人」だ。そんな我々が賃上げを勝ち取れば、単純な話だが資本は人件費アップの埋め合わせのためさらなる利潤を求めるだろう。それに従業員の待遇改善は、長期的に見て企業の競争力を高めるだろう(近年は企業も政治家もそれが分かっていないが)。そうして「新植民地主義侵略」が強まる、という理屈も分からないでもない。
 しかし労働者が待遇改善を求めて闘うのは当然のことだ。雇われている以上、少しでも高い賃金、まともな休養、職場の安全を求めるのは当然だ。
 そもそも労働者が全てを獲得し、全てを決定するべきだ。環境破壊企業や軍需産業の企業の労働者であっても、待遇改善と共に、企業の在り方を変えるため闘うべきではないか。
 かつては原発建設阻止のため市民と共に闘った電力会社の労組もあったと聞く。関西生コン支部は待遇改善を勝ち取ると共に生コンの品質を維持するため闘っているのは周知のことだ。動労千葉も、JRの「合理化」という名の安全性軽視を強く批判し闘っている。労働者の非和解な闘いこそ社会を変える。

 3
 日帝の手足となって無自覚に侵略に荷担する日帝労働者が、自らの帝国主義的、反革命的、小市民的利害と生活を破壊、解体することなしに、「日本プロレタリアートの階級的独裁」とか「暴力革命」とかを唱えても、それは全くのペテンである。自らの生活を揺るぎない前提として捉え、自らの利害を更に追求するための「革命」などは、全くの帝国主義的反革命である。一度、植民地に於いて、反日本帝国闘争が、日本帝国資産の没収と日本帝国侵略者への攻撃を開始すると、日本帝国労働者は、日本帝国利益擁護=自らの小市民的生活の安定、の隊列を組織することになる。

 4
 日帝に於いて唯一根底的に闘っているのは、流動的労働者=日雇労働者である。彼らは、完全に使い捨て、消耗品として強制され、機能付らけれている。安価で、使い捨て可能な、何時でも犠牲にできる労働者として強制され、生活のあらゆる分野で徹底的なピンハネを強いられている。そうであるが故に、それを見抜いた流動的労働者=日雇労働者の闘いは、釜ヶ崎、山谷、寿町に見られる如く、日常不断であり、妥協がない闘いであり、小市民労働者のそれとは真向から対決している。


 たしかに、安定した収入と立場があれば資本と闘いたくないし、交渉してもある程度で折り合いをつけたくなるのは人情だ。一方で日雇労働者の立場の厳しさについては言うまでもが、日雇労働者が土木工事に動員され、立派な道路や橋が作られれば、それも、「日帝を強化」することにならないか?
 資本家に搾取されつつ、職を失う危険もあるのは全ての労働者に共通している。それに東アジア反日武装戦線のメンバーには私立大で学んだ経験のある方も多いようだが、日雇労働者から見れば、インテリのブルジョアジーであり、「小市民」ではないか?自分自身も糾弾される対象ではないか?

 社会の中に線を引いて、そこから上は搾取階級で加害者、その下は被害者・・という分け方は賛同できないな。この時代に暮らしていれば、誰しも戦争と環境破壊の加害者であり、かつ被害者ではないか?そりゃ一部の特権階級や、世襲の資本家や政治家は、加害者のカテゴリーに入れたいけどな。

 このように、我々労働者には決して共感できない主張なのだが、、、しかし彼らの主張を無視できない。帝国主義国とその企業が、海外で当地の政府と結託して乱開発を進め、住民の生活を圧迫し、労働者を搾取するのを止めさせたい。日本帝国主義は打倒しなくてはならないし、天皇制は廃止しなければならない。普通の感覚があればそう思うだろう。だから、その手段は賛同できないが、身を挺して日本帝国主義と闘った彼らは今でも注目を集めるのかもしれない。


 蛇足。全てウィキペディアで読んだ話でお恥ずかしいが、昭和天皇裕仁殲滅を目的とした「虹作戦」は、那須御用邸から戻るヒロヒトが乗る「お召し列車」が荒川橋梁を通過するタイミングで橋脚を爆破する計画だった。
 起爆装置に電線をつないで爆破する計画の準備を始めたが、決行の前夜、何者かが近辺をうろついていたので、計画自体を中止した。警察と国鉄で、天皇の「お召し列車」が通る鉄路を全て警戒していたので、実行部隊が見たのは私服警察官だったのかもしれない。
 それに爆破しようとした鉄橋は宇都宮線だったが、「お召し列車」が通ったのは貨物車用の鉄橋(現在埼京線が通る)だった。だから敷設が完成していても、遠くから起爆スイッチを押す担当の部隊は、さぞかしがっかりしただろう。もし誤爆していれば・・・埼玉県から都心に通勤する労働者は、復旧まで会社に泊まり込むか近くに安アパートを借りるしかない。一生恨んだろうな。こういう点からも彼らには労働者の視点がないんだよ。
 この時に使用されなかった爆薬は三菱重工への攻撃に使用されたが、すさまじい威力のため多くの犠牲者を出したことにメンバーもショックを受け、以降は爆薬の量を制限したらしい。

 (この記事はnoteにも転載しました)
posted by 鷹嘴 at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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