2025年04月30日

イスラエル国を解体するには、まず我々が・・

 2024年6月1日、文京区民センターにて「5・30リッダ闘争 52周年記念集会」が行われ、パレスチナ問題の研究を続ける東京大学名誉教授・板垣雄三さんの講演に続いて、重信房子さんと足立正生さんを交えた討論が行われた。板垣さんの発言と当日配布のレジェメから少しだけ引用する。

 1971年のある日。既に板垣さんはパレスチナ問題についての高名な研究者だったが、3人の学生が板垣さんを訪ねてきた。彼らは「ベイルートで生活するために必要なことを教えてほしい」という。何かを直感した板垣さんは、彼ら3人の容貌など極力記憶に留めないようにしつつ、「現地社会を理解するように」などと諭したという。
 翌年5月、「鹿児島大学の学生の・・・」というニュースに接し、やはりあの3人だったのか、と思ったそうな。つまり板垣さんを訪れた学生たちが、リッダ闘争(俗に言うテルアビブ空港乱射事件)に決起した3人だった・・・。
 以上の心温まるエピソード(笑)はさておき、


 板垣さんは、第二次世界大戦の連合国は、戦争の終わらせ方を誤ったと語る。例えば日本帝国主義の植民地に過ぎなかった「満州国」は、日本の敗戦と共に消滅したが、しかし「第2の満州国を作ってしまった」。つまりイスラエル国である。
 たしかにそう言われてみれば満州国とイスラエル国は似ているなあ。日本帝国主義が中国東北部に偽満州国をでっち上げて清朝のラストエンペラー溥儀を皇帝にまつり上げた建前は、満州は元々清帝国を作った満州民族のものだったから、ということだろう。しかし当時の満州の人口は約3千万人、そのうち満州民族は200万人程度であり、当時の軍部の一部からも時代錯誤だという批判があった。
 イスラエルの建国当時、シオニストが熱心にパレスチナへユダヤ教徒を移民として送り込んでいたが、当然ながらユダヤ教徒よりもイスラム教徒の方が多かった。しかしここにユダヤ人の国家を作ると宣言し、パレスチナ人への虐殺と排除を始めるのである。
 イスラエルという国家は、実質的に(ユダヤ資本が操る)欧米帝国主義による植民地であり、疑似国家だ。アメリカの政策が変化すれば、「満州国」と同様に消え失せるだろう。それと、列強による植民地支配が終わりを迎えつつあった時代に新たな植民地になった点も似ている。

 しかし満州国とイスラエル国は少し様相が違うな。前回引用したように、一般的に植民地と言うのは、現地住民を奴隷化し搾取し、天然資源を奪い、自国に有益な産業を押し付け、自国の工業製品を売りまくり、加えて自国の習慣と宗教を押しつけるものだろう。満州国をでっち上げた日本帝国主義のように住民を弾圧し虐殺するが。
 住民に重い負担と文化伝統の破壊をもたらしつつも、当然ながら住民が大人しく政策に従うことを望んでいるだろう。全くの絵空事だが満州で「五族協和」「王道楽土」と唱えた日本帝国主義も同様だろう。
 しかしシオニストによるパレスチナ植民地化は「征服型植民主義」だ。オーストラリアや北米大陸に入植したヨーロッパ人が現地の人々を皆殺しにして自分たちの国家を作ったように、ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人を全て虐殺・追放することが究極の目的だ。支配するのが目的ではなく、排除するのが目的なのだ。
 まるでナチスのホロコーストのようだ。「ゲルマン民族は優等で、ユダヤ人は劣等だ」、「ユダヤ人は2千年前に追放されたから帰還する権利がある、アラブ人は侵略者だ」などと唱えて民族浄化を続ける、ナチズムとシオニズムは双子のようなものだろう。


 また板垣さんは、元アムステルダム大学教授のペーター・コーヘン氏の論考を邦訳し、さらに解説を加えている。なおペーター・コーヘン氏はユダヤ系オランダ人である。
 前回紹介した識者の論考と同様に、イスラエルとは植民国家であると指摘し、さらにこの植民国家に入植したユダヤ人は去るべきだと説く。

◇ 終わることのないパレスチナ紛争の根因:それをどう正すか | ハフポスト NEWS
 パレスチナ紛争の本質は民族・宗教紛争などでなく植民地主義の先住民駆逐・土地略奪であって、問題解決は、欧米が創りだした植民国家イスラエルの解体をおいてほかにない。犠牲者とされてきたパレスチナ人には遅まきながら正当な権利回復と補償とがおこなわれてパレスチナ人の国が建設されるべきであり、他方、立ち退くべき植民者のユダヤ人にも彼らやその父祖たちを棄民した欧米諸国が先頭に立って補償を与え再移住を受入れるイニシャティブがとられるべきである。国連を中心に世界全体が協力しあって、力に驕るイスラエルに対しては経済制裁の圧力をかける反面、ユダヤ人植民者の立ち退き計画ではかつてパレスチナ人がなめたナクバ(追放・離散という大破局)の再現など回避する、こんな道筋で紛争の公正かつ賢明な平和的解決方式を構築すべきだ。

 コーヘン教授の論考をもう少し長く引用してみると、
◇ イスラエル国家の廃止を呼びかけるP・コーヘン提案をどう読むか | ハフポスト NEWS
 ユダヤ人とは民族である、というのがシオニズムの「重要な信念」である。そして彼らは19世紀に、「ユダヤ人国家の観念」を発明した(ユダヤ人という民族は存在しない。ユダヤ人の国家という発想も全く愚かだ。言うまでもないだろう)。
 この観念を「解体し埋葬するには長い時間がかかっている」(こういう愚かな発想が21世紀になっても世界を縛り付けている)。
 「シオニズムは観念をもてあそぶイデオロギー」であり、パレスチナは「ユダヤ人」のものだ、と決めつけている。

 パレスチナで起きているのは、かつて南米、オーストラリア、アメリカで行われ、先住民に悲惨な境遇を強いている、「古典的な欧米植民地主義」だ。
 しかしパレスチナは、上記の例と比べるとはるかのちになって植民地された特別なケースだ。なんと、全般的な脱植民地化の時期になってから植民地化されたのだ。「第二次大戦の直後、国連がまさしく植民地主義と不法な征服とを停止させるべく設立されたのちに、そこは植民国家となった」。
 「しかしそのイスラエルも、もし欧米の支持を失えば、もはや自衛手段をもち得ず、自国の存在を確保する力も、生存を支える原料素材も、いっさいを喪失することになるだろう」


 「二国家解決方式」は不可能だ。この案は、シオニストによるパレスチナ征服と追放は合法だったと受け入れよ、ということだ。それにシオニストの支配は続く限り、「彼らが国を分ちあうことなど決して起きない」。軍事力でパレスチナ人を追い出すという「暴力には終わりがない」。
 「もっとも手厳しいイスラエル批判者にだけはもともと明らかだったこと、すなわち植民者らが目指すのはパレスチナ全土からパレスチナ人を除去することだということを、イスラエル人もあえて声高にあからさまに口外するようになった」。

「一国家解決方式」も全く不可能だ。「パレスチナ人が植民者と同等の権利を獲得」することは「何らかの奇跡」以外にあり得ない。植民地支配は「大衆の大規模な闘争」を抜きにして打倒できるものではなく、パレスチナ人にその力はない。

 だから国際社会は、かつて南アフリカに与えたような厳しい制裁をイスラエルに対して行い、「イスラエルの経済生活を極度に困難なもの」にして、政治的・道義的・経済的立場を変化させ、期日を定めてパレスチナ人に全権を与える。本来それは1948年5月14日のイギリスによる委任統治の終了と共にパレスチナ人に与えられるものだった。
 イスラエルに移住したシオニストたちには、出身国へ帰還、またはいずれかの地へ移住させる機会を「平和的に、かつ十分な補償を与えて」提供するべきだ。シオニストを放逐するのではなく、他の場所でのずっと良い生活を築く機会を与えるということであり、1948年にシオニストが行ったこと(ナクバ)を再現してはならない。パレスチナ人が許すなら、シオニストの残留も可能だろうが、かつてのような特権は与えられない。
 全く同意だ。イスラエル国は直ちに解体されなければならない。欧米からの移民は覚悟を決めろ。パレスチナに残りたいなら残ればいいが、今までの特権はないよ。
 国際社会がイスラエルに対する厳しい厳しい制裁を科せば容易だろう。と言うだけなら簡単だが欧米が、すなわちアメリカという壁が立ちふさがる。


 イスラエルの最大の宗主国は、最悪のテロ国家であるアメリカ合衆国だ。あまりにもイスラエルの残虐ぶりが際立っているが、かつてベトナム戦争で、アフガニスタンやイラクへの侵略戦争で、というか全世界でアメリカが何をやっているのか、アメリカとはどういう国なのか、言うまでもない。
 しかもトランプはイスラエルと結託するだけでなく、ガザへの民族浄化を口にする。地獄のような状況だが、イスラエルの好き放題を許してきたのが、アメリカのユダヤ系ロビー団体の存在だ。
◇ 星条旗とダビデの星:米ユダヤ系団体が仕掛ける「落選運動」 涙のむ親パレスチナ候補 | 毎日新聞
◇ 全米最大のユダヤ系ロビー AIPACの影響力とは(油井’s VIEW) - 国際報道 2024 – NHK


◇ 「他の子供たちが遊んでいる間に勉強に励む」米ユダヤ系、少数派でありながら政財界に絶大な影響力 : 読売新聞
◇ 【アメリカ大統領選 望月麻美キャスター現地報告B】ユダヤ系ロビー団体 影響力は - キャッチ!世界のトップニュース - NHK

 なんでこの、シオニストロビーAIPACって、こんな資金力があるの。そりゃユダヤ系の巨大企業がバックについてんだろ。AIPACにネガキャンを張られたら選挙に落ちる。逆にAIPACに同調すれば支援される。金がなきゃ選挙に勝てないもん。だから民主党も共和党もシオニストに逆らえない。だからいつまでたってもアメリカの政策はシオニストにべったりだ。統一教会の自民党への影響力どころではない。だから「パレスチナはイスラエルのもの」、という、シオニストのデマがまかり通る。

 宗教というのは組織拡大のために政治にすり寄り、政治は宗教を保護し利用する。その中で教義も変質していく。そう思っていたが、統一教会と自民党の関係を見ると、それだけじゃないことに気づいた。社会の中で宗教の理想を反映しようとするんだ。
 しかもその目標が、その宗教の本筋から外れることもあるようだな。シオニズムはユダヤ教の中で異端だ。ヘルツルはユダヤ教を知らないのにユダヤ人の国を作ろうと言い出したよな。ちなみにトランプのシンパもおかしなことになっているらしい。

 そもそも福音派というのが相当ヤバい。聖書を都合よく解釈しているようだ。

◇ なぜアメリカはイスラエルを支援するのか|shinshinohara

◇ “2050年までにキリスト再臨”を信じる人々がイスラエルを支持する理由とは?(柳澤 田実) | 学術文庫&選書メチエ | 講談社

 ユダヤロビーが強ければそこに連なる大企業は安泰だ。アメリカの軍需産業にとってイスラエルは普段から大のお得意様、ジェノサイドを始めてくれれば大喜びだ。結局は金が全てだ。シオニズムは金の回りをよくするんだ。もちろんアメリカの納税者にとってイスラエルは巨大な負担だが、儲ける企業がある。議席のためにユダヤロビーの言いなりになる政治家がいる。国が滅茶苦茶になっても誰かが得するんだ。そういうもんだよ。国破れて山河在り、だけど悪代官と越後屋は大儲けだ(笑)

 シオニストがアメリカの政財界を操り、民衆はそのプロパガンダを刷り込まれている。資本がより多くの利潤を求めるためには、ナショナリズムによって人民を扇動しなければならない、という論考がかつて東京新聞に掲載され、俺も引用したが、 宗教的な扇動もその手段だろう。お国のために戦え!イスラエルは2千年前ぶりに故郷に還った人々の国だから助けなければ!などとね。
 しかし少しは考えてみなきゃ。パレスチナ人民を追放して欧米の移民が主体の国を作ることが正しいのか?「2千年前に住んでいたから、戻る権利がある」という主張を正しいと思えるのか?それが正しいというなら、アメリカ大陸以外にルーツを持つアメリカ国民は、いますぐネイティブアメリカンのために土地を明け渡さなければならないだろう。こういう政権与党+宗教+大資本が結託した支配構造が続く限り社会は変わらない。他人事じゃないよ、日本も同じだよ。


 ガザをリゾート地にすると放言し、ネタニヤフをホワイトハウスに招き、イスラエルのジェノサイドに抗議する留学生を「反ユダヤ主義」と敵視し逮捕するなど、おぞましい様相を見せているトランプ政権だが、アメリカのイスラエルに対する世論は特に若い世代で変化が見られるという。




 10.7以降、アメリカの市民・学生も街頭やキャンパスでイスラエルを激しく弾劾している。・・・しかし自国が攻撃された際にも、「自衛」と称するジェノサイドを冷静に批判できるだろうか?実際に9.11の際には世論がナショナリズムに染まったではないか・・・という疑念が一瞬頭をよぎったが、実際にイラク侵略戦争の際にアメリカでは侵略と虐殺を弾劾する闘いが燃え広がった。多くの市民がナショナリズムや宗教的な扇動に惑わされず闘った。

 もちろん俺が宗教を否定するわけがない。うちのお寺は浄土真宗だ(笑) しかし真っ当な宗教から変質し、ナショナリズムを扇動し政治を動かそうとする宗教(と、言っていいのか?)は許せない。だから我々全世界の労働者人民は、戦争と収奪の手段そのものである似非宗教とナショナリズムを否定しなければならない。我々が意識を変えればイスラエル国解体は目前だ。この闘いを通じて「国家」という「まやかし」からも脱却できるだろう。
posted by 鷹嘴 at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | パレスチナ情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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