2007年11月06日

夏淑琴さん名誉毀損訴訟、勝訴!

11月2日の夏淑琴さん名誉毀損訴訟の判決について、非常に遅くなりましたが報告させていただきます。

ご存知の通り東京地裁は被告の東中野修道氏(亜細亜大学教授)と展転社に、合計400万円の賠償を命じました。残念ながら謝罪広告要求は棄却されましたが。
(東京地裁民事10部、平成18年(ワ)第9972号 損害賠償等請求事件)
(三代川三千代裁判長裁判官、藤本博史裁判官、兼田由貴裁判官)

賠償金の内訳は以下の通りです。
1.「『南京虐殺』の徹底検証」(展転社)の日本語版については、著者の東中野氏と出版した展転社の分担で慰謝料300万円+弁護士費用50万円
(原告からの反訴状送達の翌日である2006年5月18日から支払い済みまで年5分の遅延損害金が加算)
2.同著の台湾版・英語版については、東中野氏に50万円
(原告からの請求拡張の申立書送達の翌日である2007年1月20日から支払い済みまで年5分の遅延損害金が加算)

今にして思えば当然の勝訴ですが、結果が出るまで非常に不安でした。約1年半に渡り傍聴・集会に参加していただいた皆様、応援していただいた皆様、本当にありがとうございました。


当日、事務局メンバーはいつも通り開廷の1時間ほど前に集合し、宣伝活動を行いましたが、「中国人強制連行藪塚・月夜野事件群馬訴訟」の支援の皆様のご厚意で、ワンボックスカーの天井から演説する我らがチラシ隊長と共同代表の大谷猛夫さんの勇姿を仰ぎ見ることになりました。また群馬訴訟の支援の皆様も傍聴の抽選に並んで下さいました。お礼申し上げます。

開廷時間が近づき、夏さんと訪日団、弁護団が入廷行進を行いましたが、「南京大虐殺なんか無かった!」と叫ぶ男性(常連の「ムラタ」氏です)が現れ一時騒然とした雰囲気になりました。(その彼も傍聴席では静かにしていたそうです)
今回の妨害者はこの男性以下数名で、彼の同志のはずの西村修平氏らは3月の第5回公判以来、姿を消したままです。
傍聴の抽選ですが、35人分に対し87名という約2.5倍の競争率となり、落選者は玄関の外で結果を待つことになりました。
思いのほか待たされたのでヤキモキしましたが、菅野弁護士が出てきて裁判所の玄関前で「勝訴」の旗を掲げると、歓喜の雄叫びとフラッシュの嵐が起こり、そして弁護団から判決要旨の説明が行われました。

shouso2.jpg

☆知らなかったのは私だけかもしれませんが、東京都教育委員会から不当免職された増田都子さんも傍聴されたそうです。ありがとうございました。
◆[AML 16672] 右翼出版社、展転社、3たび敗訴!

増田さんは法廷から出るとき「ムラタ」氏を見かけたので、声をかけたが無視されたそうです。私も、裁判所前での弁護団の挨拶が終わってから数人で立ち話をしていると、この「ムラタ」氏が通りかかったので、私の顔も知っているはずなので手を振ってあげましたがやはり無視されました。どうやら意外と人見知りをする御仁のようです(笑)

その後裁判所内のロビーで記者会見が始まるのを待っていると、夏淑琴さんが弁護団の方々とやってきて、事務局のZ女史と熱く抱擁し、喜びを分かち合っていました。中国語が堪能なZ女史は訪中して夏さんと面会したこともあり、今回の夏さんの滞日中はかなりの時間同行していました。小柄なお二人が抱擁する姿は忘れ得ぬ光景になりそうです。
ぎゅう詰めの記者会見の会場にマスコミ関係者でもなんでもない我々も入り込んでしまいました。夏さんが、
「南京虐殺から70年を前にして記念すべき日で、亡くなった同胞にも一つの弔いになった。真実を述べる機会はそんなに多くない。これからも史実を語り続けたい」
と語ったことは翌日報じられました。
kishakaiken1102.jpg



・・・続いて判決の内容について紹介します。判決文は、主要な争点として以下の3点を挙げています。
1.東中野氏の著書「『南京虐殺』の徹底検証」は、原告(夏淑琴さん)の名誉を毀損するものなのか?また、原告の名誉感情を傷つけるものなのか?
2.この著書に違法性がないか?
3.被告(東中野氏)が、自分の主張は正しいと思い込んでいたことは、無理も無いことなのか?

1については、
「徹底検証」の中の「『8歳の少女』と夏淑琴は別人と判断される」などの記述を引用し、
「夏さんは『8歳の少女』のフリをして虚偽の証言をしている」というのが、
この著書の主張であることを、「普通の注意と読み方をする一般の読者であれば」理解するだろうと指摘しています。
つまりこの裁判を通じての「夏さんを嘘つきなどと言ったわけではない」という被告側の主張は、「普通の読者」ならば受け入れられないことが、認められたのです。
そしてこれは、南京大虐殺の「生存被害者」として有名な夏さんの名誉を毀損し、さらに夏さんの名誉感情を「著しく侵害するものであることは言を俟たない」と指摘しています。

2については、
「徹底検証」はアメリカ人宣教師マギーの記録について、
●「bayonet」という単語には「銃剣で突き殺す」だけでなく「銃剣で刺す」という意味があることを、無視したこと
●「7、8歳になる妹」と「その8歳の少女」を別人だと解釈したこと
これら誤った解釈を行い、夏さんを事件の被害者とは別人だと主張したのであり、「違法性を欠くということは」できないとしています。
東中野氏は(恐らくは意図的な)誤訳と曲解によって夏さんは別人だという主張をひねり出したのですから、当然のことでしょう。

3については、
●「bayonetted」を「突き殺した」と訳したことからもたらされる不自然さに「通常の研究者であれば」気付くはずであり、
●「『8歳の少女』は、シアの子供でもマアの子供でもなかった」などという珍解釈は、
マギーの記録の中の「その8歳の少女は傷を負った後、母の死体のある隣の部屋に這って行った」という部分と全く矛盾するものであり、
「論理に破綻を来たしているというほか」になく、「通常の研究者であれば」この矛盾に気付き、他の翻訳と同様の解釈に至るはずだとしています。
つまり東中野氏の主張は「通常」ではなく、その論理は矛盾だらけで破綻していることが判決で認められたのです。詳しくはピッポさんがUPした判決文をお読み下さい。

南京大虐殺否定論とは無知と妄想でこしらえられたものですが、その代表的論者とも言える東中野氏の主張が、このように完膚なきまで覆されたのは喜びに堪えません。(「名誉感情」の侵害が認められた点も併せてどれほど画期的な判決なのかは、「思考錯誤」で指環さんが論じて下さると思います)
東中野氏は控訴する方針ということですが、この一審判決の根幹に揺るぎは無いでしょう。

* * * * * * * * * * * *


判決の翌日には、江東区の区民館ホールにて、「〜南京事件から70年〜 史実は勝つ! 南京事件被害者夏淑琴さんをお迎えして」と題して報告集会を行い、多くの方々が参加してくださいました。本多勝一先生もいらっしゃいました。
shuukai1.jpg

夏さん、「南京市律師協会監事長」の談臻さん、「南京市法律援助中心主任」の陳宣東さんのお話、弁護団の渡邉晴巳さんによる判決の説明、「中国人戦争被害者の要求を支える会」事務局長の大谷猛夫さん、歴史教育者協議会委員長の石山久男さんのご挨拶に加えて、事務局のメンバー有志で寸劇「第一回歴史改竄会議」を、中国語同時通訳の中で行いました。
「元総理」が「歴史改竄会議」を主催しましたが、「御用学者」が南京大虐殺を否定することなど不可能なことを悟りご破算になるというストーリーです。「元総理」は*倍前首相を巧みに形態模写し、失言して「秘書」に丸めた紙で後頭部を叩かれるシーンなどは後ろで見ていてふき出してしまいました。「元総理」の間抜けぶりだけでなく、歴史改竄の愚かさを表現できたと思います。惜しむらくは安*前首相と比べて「元総理」役のB氏の逞しい身体つきは、その役柄にそぐわなかったことです(笑)

集会終了後近くの居酒屋で、夏さんご一行、弁護団、本多先生、我々支援者の大人数で祝勝会を行い、大いに盛り上がりました。
翌日、クマさんら事務局4名が車3台に分乗し、ご一行を成田までお送りしました。全く頭が下がります。(私は前日の祝勝会で泥酔し、二日酔いで寝込んでいました)
夏さんとまたお会いできることを心待ちにしております。


・・南京への道・史実を守る会・・・・・・・
URL:http://www.jijitu.com
posted by 鷹嘴 at 23:06| Comment(12) | TrackBack(3) | 夏淑琴さん裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「通常の研究者であれば」うんぬんよりも、それに続く
>以上述べた2点だけからしても,被告東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く,学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない。
という一文が、下らない著作物を真面目に読まさせた裁判官の怒りをよく表していると思う。
Posted by 黒天使 at 2007年11月07日 00:00
2ちゃんねるで遊んできましたが「南京大虐殺の被害者だと認定されたわけではない」という論調がありますね。

それでは、もし自分の回りに「殺人者」だと言いふらす人があらわれて名誉棄損裁判だとなった時に「殺人者では無いと認定されたわけではない」となってしまうのですけどねぇ・・・。
Posted by 名無しさん at 2007年11月07日 08:38
謝罪広告が棄却されたのは、とても残念ですが、公の場で南京虐殺否定論者の嘘八百が指摘され、彼らの大嘘つきぶりと姑息で卑劣な手口が批判されたのは大きいですね。

とりあえずは夏さんに「おめでとうございます」と言わせてもらいます。
Posted by 秋田冒険王 at 2007年11月07日 17:24
西日本様

まず、もしここを見てくださったなら、次の質問に答えてください。
洗脳作成って何ですか?

それから、日本が過去の罪を認めることのどこがそんなにマヌケなのかさっぱりわかりません。
それを言ったらドイツはどうなんですか?

Posted by アッツィー at 2007年11月08日 18:21
皆様、メッセージありがとうございます。

アッツィーさん、申し訳ございませんが「西日本」の書き込みは削除しました。
ああいう書き込みをこのブログに残しておくと、「史実を守る会」の活動に差し障りがありますので。
ご了承下さい。
Posted by 鷹嘴 at 2007年11月09日 01:21
 西日本様

 貴殿が何を言いたいのかはよ〜〜〜くわかりました(納得したわけではないので誤解なきよう)。でも、世界に先駆けて平和憲法を取り入れ実践し続けた日本、戦争責任の取り方もユニークであって言いと私は思います。

 で、世界で行われた虐殺を糾弾すべく貴殿が具体的になにをしたかはまるで書かれてませんね。何もしてないのなら、私は貴殿に馬鹿にされたり否定したりされるいわれはないです。
Posted by アッツィー at 2007年11月10日 10:37
失礼、上記の書き込み、「ユニークであって言い」ではなく「ユニークであって良い」でした。
そこだけ訂正します。
Posted by アッツィー at 2007年11月10日 10:38
「西日本」のコメントには、本多勝一先生や中帰連への中傷がありましたので、削除しました。今後出入り禁止とします。しつこい場合にはそれなりの対応をしなければなりません。


>アッツィーさん

> で、世界で行われた虐殺を糾弾すべく貴殿が具体的になにをしたかはまるで書かれてませんね。

そうですね。ああいう馬鹿ウヨは自分では何もしない、する気も無いクセに他人にイチャモンをつけるんです。
Posted by 鷹嘴 at 2007年11月10日 12:30
本当に、勝訴との判決を聞いてほっとしました。南京事件にせよ、従軍慰安婦問題にせよ、歴史修正主義者(歴史改竄主義者と言った方が正しいでしょうか?)の証人に対する攻撃は酷いものです。これで一定の歯止めがかかればいいのですが。

しかし報告集会の寸劇は、左派らしいとは言え、悪い意味で左派らしい感じがします。歴史修正主義者とは距離をとる現実的な保守主義者がいて、興味があって報告集会に参加してみたとしましょう。もしその人がこの寸劇を見たとしたら、ずいぶん疎外感を覚えるのではないでしょうか。

今は、靖国カルト右派に対抗するためにも、現実的保守主義者と手を結ぶことを試みる時期ではないかと思うのです。気が付けば、麻生のような民族主義者が復活、なんてことになったら目も当てられません。運動論として、こういう寸劇とは違う形のアピールを模索したほうが良いような気がします。

現実にこの運動に参加したわけではないし、余計なお世話かもしれません。しかし、外野からの一感想としてこのようなことを思いました。
Posted by さだまさと at 2007年11月11日 15:16
 西日本様へ

 南京市は広いんです。その虐殺はなかったといっている日本兵のいた範囲だけが虐殺がなかったといってもそれだけで否定できるものではありません。

 あったという証言・記録はたくさん出てます。あなたブログの右側にある「まずこちらを読んで勉強してね」の「こちら」から入れるリンク先読んでいませんね?
Posted by アッツィー at 2007年11月15日 08:31
再び「西日本」のコメントを削除しました。
もちろん今までの発言内容やIPは保存しています。現在各方面と相談中です。
Posted by 鷹嘴 at 2007年11月15日 18:07
アッツィーさんへ。

いるんですよねー、当時「南京市にいて虐殺を目撃しばかった人間」の証言だけを持ち出して虐殺を否定するアホが・・・。小学館からもそんな本が出ていますし(まぁ、『SAPIO』なんてウヨ雑誌出している出版社ですから)ソイツみたいなアホが後を絶たないようですな。

こうゆうアホは中国でいう「市」は日本の「県」より広いことも知らないでしょうし(「南京城内区」だけでも山手線の内側に相当する広さ)、
ましてや『南京事件』の範囲が南京市だけでなく、連接する都市やその周辺の農村地帯も含まれる(なぜなら攻略戦における戦闘はその周辺地域から始まっている)ことも知らない無知ですからねー。

まぁ、もう一つ言わせてもらえれば、管理人さんが指摘するとうり、こうゆうアホは無知のうえに自分では調べようともしない無恥ときてますから、ホント救いようがありません。
Posted by ノン・フライ at 2007年11月15日 23:53
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