2005年10月01日

靖国訴訟判決 二例

大阪高裁での小泉靖国参拝訴訟は、原告側の賠償請求は棄却された。要するに敗訴だろう。しかし小泉の参拝については公的であり、かつ憲法違反であると結論づけた。

9/30の朝日夕刊の一面によると、今年と去年の計10回の小泉靖国参拝訴訟のうち憲法判断に踏み込んだのは僅か二件だが、その二件とも違憲であると判断している。また公的か否かを判断したのは6件、そのうち4件が公的であると判断。(いうまでもなく賠償請求は全て棄却)
判決ではでは「公用車を使用し首相秘書官を伴っていた」ことなどから公的参拝と判断(さらに「憲法20条3項の禁止する宗教的活動にあたると結論」)しているが全く当然である。「私的」に参拝したいのなら電車に乗って一人で逝けよ(笑)

また、原告団の一人の高金素梅氏については様々な憶測が語られているが、そういうどーでもいい話はさておき、大阪地裁での6月17日の控訴審の口頭弁論にて次のように語ったという。
「私たち台湾の原住民族が、人殺しをした人と一緒にまつられることは納得できません」
これは勝手に靖国神社なんぞに祀られている人々の本音だな。
(ちなみに1995年、沖縄の「平和の礎」落成に際、戦争犠牲者の韓国人の遺族は、「戦争責任に時効はない。ヒトラーもアンネ・フランクも同列に刻名、というわけにはいかない」と述べたという)
もしオウムの麻原が死刑になっても、地下鉄サリン事件の犠牲者と一緒に慰霊するわけにはいかないだろう。それを素面でやっているのが靖国神社とかいうカルト集団である。
死んだらみんな神様、という言い方にも違和感あり。東條英機らA級戦犯や、(残念ながら裁かれることはなかったが)昭和天皇裕仁は、いまごろ阿鼻叫喚をのたうち廻っていることだろう(笑)もちろん連中の墓を遺族やシンパが個人的にお参りするのは勝手だがね。

ところで別の訴訟(9/29東京高裁)では、
一審の千葉地裁判決が「神社への往復に公用車を用い、秘書官やSPを同行した点を重視して『職務行為に当たる』と認め、私的参拝とする国側の主張を退けていた」 にも拘らず、
「職務として参拝する趣旨と受け取られることを避けるため、8月15日を断念して13日に参拝することとした」「献花代3万円は私費だった」などを根拠として、
「神社への往復に限れば職務に関連した行為といえるとしても、参拝した一連の行為が全体として職務として行われたとまではいえない」と判断したという。あまりにもアホ臭くて言葉もない。もしかして日本という未開国は三権分立が確立していないのかもしれない。(以上、問答有用より焼き直し)

・・・それではニュースをコピペ。

司法判断まっぷたつ 首相の靖国参拝
2005年09月30日15時03分

 首相の靖国神社参拝をめぐる司法の判断は、1日違いでまっぷたつに分かれた。「国内外の強い批判を押し切って参拝を続けた首相の行為は、憲法の禁じる宗教的活動にあたる」と明快に位置づけた30日の大阪高裁判決は、憲法判断に踏み込まなかった29日の東京高裁判決とは対照的な判断となった。参拝推進派の国会議員から反発がでる一方、原告や支持者らから評価する声があがり、立場の違いで反応も割れた。「毎年参拝」を表明する小泉首相は厳しい選択を迫られる。

 この日は小泉首相ら閣僚が出席して衆院予算委員会があった。午前中の質問者は自民、公明の与党議員だけだったこともあり、靖国問題には触れないまま午前の審議を終えた。

 8月15日に靖国神社に参拝した小池環境相は休憩時間に、「司法の判断ですから。(私の立場では)コメントできません」とだけ話した。

 自民の奥野信亮衆院議員は「いまの日本があるのは明治以来、国のために貢献してきた人たちがいるから。その人たちを祭るのも、参拝するのも当然。日本人の代表の首相が参拝するのは当然だ。それがいまの憲法に反するというのなら、憲法の方を変えるべきだ」と話す。

 今夏は総選挙の準備のため機会がなかったが、自らも毎年、参拝しているという。

 「一裁判の判決だけで論ずるのではなく、国が築かれた歴史を学んだ上で、日本人全体の問題として国民的な議論をすべきだ」とも話す。

 閣僚経験がある自民のベテラン議員は、「あえて私人としての参拝を明確にしない首相の責任は重い」と指摘する。過去に自分も参拝したが、いずれも私人と明言し、秘書らも同行させなかったという。「今回の判決が悪影響を生むことを懸念している」とも述べた。

 「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の会長を務める瓦力氏の事務所は「個別のことでコメントは出さない」としている。

 一方、共産の佐々木憲昭氏は「判決は当然だと思う。総理大臣は国の代表であり、個人の立場との区別はできない。本人が意識のなかでどう思おうと、客観的に総理大臣であることには変わりがない」と国会内で話した。

         ◇

 原告側は大阪市北区の大阪司法記者クラブで会見した。弁護団事務局長の中島光孝弁護士は「結果は棄却だが、内容は相当踏み込んだ判断で、画期的な判決だ」と評価した。

 台湾立法院議員で、台湾の原住民族「タイヤル族」の高金素梅さん(40)は「小泉首相は憲法に基づいた行動をとらなければならない。憲法を守り、二度と参拝するべきではない」と、この日の高裁判決を尊重するよう強く求めた。「違憲かどうかは日本人の問題で、私たちにとってはさほど大きな問題ではない。関心があるのは、日本の反省、謝罪、賠償だ。そして、靖国神社に合祀(ごうし)されている祖先の霊を返してほしい」と語った。

公明幹事長「参拝は自粛すべきだ」 野党各党も中止要求
2005年09月30日13時28分

 公明党の冬柴鉄三幹事長は30日、首相の靖国神社参拝を違憲とした大阪高裁判決について「公明党は、首相の靖国参拝は憲法上の疑義があることと、アジア外交の観点から首相に『自粛すべきだ』と申し上げてきた。中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席は『目にしたくない』とまで言っている。憲法上の疑いがある以上、政治的判断として自粛すべきだ」と述べた。国会内で記者団に語った。

 一方、民主党の前原代表も国会内で記者団に対し、「極めて重いことだ。小泉さんは的確な判断をしてもらいたい。憲法上の判断が出たわけだから、なおさら行くべきではない」と述べた。さらに「A級戦犯が分祀(ぶんし)されれば(自分が首相になっても)参ると申し上げてきた。判決を受け、憲法の政教分離の考え方に立って、もう一度検討し直さなければならない。党としては無宗教の施設の議論を加速させたい」と語った。

 共産党の市田忠義書記局長は「画期的だ。参拝断念を重ねて強く求める」、社民党の又市征治幹事長も「首相は参拝を断念する意思を表明すべきだ」などとした談話をそれぞれ出した。

「首相の靖国参拝は違憲」大阪高裁判決、賠償は認めず
2005年09月30日13時20分

 01年から03年にかけての3度にわたる小泉純一郎首相の靖国神社参拝で精神的苦痛を受けたとして、台湾人116人を含む計188人が、国と小泉首相、靖国神社に1人あたり1万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。大谷正治裁判長は、参拝が首相の職務として行われたとしたうえで、「国内外の強い批判にもかかわらず、参拝を継続しており、国が靖国神社を特別に支援している印象を与え、特定宗教を助長している」として、憲法の禁じる宗教的活動にあたると認めた。一方で、信教の自由などの権利が侵害されたとは言えないとして、原告らの控訴を棄却した。

 小泉首相の靖国参拝をめぐる訴訟の判決は、全国の6地裁と2高裁で計9件言い渡されており、いずれも賠償請求を退けている。このうち昨年4月の福岡地裁判決が違憲判断を示したが、高裁の違憲判断は初めて。過去には中曽根康弘元首相の靖国神社公式参拝について、大阪高裁が違憲の疑いがあるとする判決を出している。

 今回の訴訟の対象になったのは、小泉首相の昨年までの4回の参拝のうち、01年8月13日、02年4月21日、03年1月14日に行ったもの。

 判決はまず、参拝が首相の職務にあたるかを検討。公用車を使用し首相秘書官を伴っていた▽公約の実行としてなされた▽小泉首相が私的参拝と明言せず、公的立場を否定していなかったこと――などから、「内閣総理大臣の職務と認めるのが相当」と判断した。

 さらに、3度にわたって参拝し、1年に1度の参拝をする意志を表明するなど参拝実施の意図が強固だったと認定。「国と靖国神社の間にのみ意識的に特別にかかわり合いを持ち、一般人に国が靖国神社を特別に支援している印象を与えた」とした。

 そのうえで、参拝の効果について「特定の宗教に対する助長、促進になると認められ、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」として、憲法20条3項の禁止する宗教的活動にあたると結論づけた。

 一方で、首相の参拝が原告らに対して靖国神社への信仰を奨励したり、その祭祀(さい・し)に賛同するよう求めたりしたとは認められないと指摘。原告らの権利や利益は侵害されていないと判断し、損害賠償請求は一審に続いて退けた。

 訴訟は、台湾立法院議員で原住民族「タイヤル族」の高金素梅さん(40)らが参加し、03年2月に起こされた。原住民族の中には第2次大戦中に日本軍のもとで戦った戦没者の遺族も含まれ、「日本の植民地支配で被害を被っており、戦前日本の精神的支柱である靖国神社への首相の参拝で苦痛を受けた」などと主張した。

 昨年5月の一審・大阪地裁判決は、首相が3回の参拝で公用車を使ったり、秘書官を同行させたりした点について「緊急事態や警備のため」と指摘し、首相の職務行為に当たらないと判断。参拝で原告らが不利益を被ったとは言えないとして、憲法判断に踏み込まないまま原告の請求を棄却した。原告はこれを不服として控訴していた。

 靖国神社は「首相参拝が違憲と判断されたのは極めて遺憾である」とのコメントを出した。

    ◇

 《判決骨子》

 ◆職務行為性

 小泉首相の靖国神社参拝は内閣総理大臣としての職務でなされた。

 ◆違憲性

 小泉首相の3度にわたる参拝で、国は靖国神社との間で特別のかかわり合いを持った。特定の宗教を助長し、相当とされる限度を超えており、参拝は憲法が禁止する宗教的活動にあたる。

 ◆法的利益の侵害

 参拝で、原告らの信教の自由などを根拠とする権利、利益について強制や干渉、権利の侵害があったとは認められない。

「首相の靖国参拝は私的行為」 千葉の住民の控訴棄却
2005年09月29日19時34分

 小泉首相の靖国神社参拝は憲法の政教分離規定に違反するとして、千葉県内の牧師や僧侶、教師ら39人が国と首相を相手に、1人あたり10万円の慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。浜野惺(しずか)裁判長は、参拝について「私的な宗教上の行為か、または個人的な立場で行った儀礼上の行為」と位置づけたうえで、「首相の職務行為として行われたとは認めがたい」と述べ、私的参拝だったとの判断を示した。

 判決はその他の論点には踏み込まず、住民側の控訴を棄却した。住民側は上告する方針だ。

 問題となったのは、首相として初めて行った01年8月13日の参拝。

 一審・千葉地裁判決は、神社への往復に公用車を用い、秘書官やSPを同行した点を重視して「職務行為に当たる」と認め、私的参拝とする国側の主張を退けていた。

 しかし、高裁は「神社への往復に限れば職務に関連した行為といえるとしても、参拝した一連の行為が全体として職務として行われたとまではいえない」と述べた。

 「私的」と認めた根拠については「職務として参拝する趣旨と受け取られることを避けるため、8月15日を断念して13日に参拝することとした」「献花代3万円は私費だった」などを挙げた。

 一審は公式参拝と認める一方、「公務員個人は賠償責任を負わない」などとして請求を棄却したため、原告側が控訴していた。

 小泉首相の靖国参拝を巡る判決は9件目(地裁7件、高裁2件)。04年4月の福岡地裁判決だけが「違憲」の判断を示し、確定している。
posted by 鷹嘴 at 02:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 靖国問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
全く妥当な判決だったとしか言いようがありませんね。小泉は口で「私的参拝」と言ってるだけ。実態は公的参拝そのもの。
「どうして公的なのか、理解に苦しむ」という発言は自分の馬鹿っぷりを披露しているだけと思われ。
Posted by 通りすがり at 2005年10月01日 19:19
>あまりにもアホ臭くて言葉もない。もしかして
>日本という未開国は三権分立が確立していない
>のかもしれない。

 そう結論付けるのはまだ早いと思います。
 目的効果基準を、アメリカで導入されているレモンテストのように厳格適用すれば、違憲と判断されるし、ゆるく適用すれば、合憲と判断される、と言うだけのことです。目的効果基準の運用は、裁判官の裁量に任されている以上、大阪高裁判決も東京高裁判決も、妥当なものといえます。
 憲法20条3項は、一切の宗教的活動を禁止した条文ではないものの、今回の判決は、小泉首相が違憲と判断されるのを予防するための努力が足りなかった、と言うことを示していると思います。
Posted by NISSHA at 2005年10月02日 19:11
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