この事件以降、学生運動や市民運動が衰退し、世の中政治に無関心な人間ばかりになった・・・・・と言われる連合赤軍事件について、今まで全然知識が無かったが、関心がなかったわけではない。まだ各地で公開しているが、そろそろネタバレ満載の感想文を書いてもいいよねwww
アジアへの侵略を続けていた日本という国では共産革命は起きなかったどころか、1945年の敗戦後も占領国であるアメリカの都合によって帝国主義の根幹である天皇制が維持された。以来アメリカ帝国主義の傀儡となり、今もこの体制に揺るぎはない。情けないことだがこれも長いものにはひたすら巻かれたがる国民性だろうか?
しかし俺がガキだったころの若者はマジでこんな国をひっくり返そうと思い、活動していたのである。連合赤軍など本気で武装革命を目指していたのである。
しかし、この映画を観てあの熱い時代?への憧れが強まるかと思ったが、凄惨な内ゲバ・粛清を繰り返して自滅していった「新左翼」に、より深い失望を感じることになった・・・
3時間という長さに耐えられるかの不安もさることながら、のっけから「中核派」「革マル派」「ブント」どころか「革共同」「社学同」「共産同」「関東派」「関西派」「京浜安保共闘」などという専門用語が並び、全く予備知識なしに劇場に入ったことを後悔していた。しかしサヨク団体って昔から、仲間割れ、分裂を繰り返してたんだねえ。今も変わらねえな。
彼らが二言目には「異議なし!」「自己批判せよ!」「ソーカツ!」「ソーカツ!」「ソーカツ!」と合唱する姿にも戦慄を感じた。うっかり「異議あり!」なんて口走ったらたちまちソーカツされちまうだろうな。こうだと決まったら全員がそっちへ突っ走らなければならないのである。こういう異論が許されない・言い出せない空気、下手すりゃ袋叩きにされかねない空気が支配していたのである。なんとなくこういう世界もあるってわかる(笑)
最初の方に出てきた佐野史郎みたいに意見が合わなくて追い出されるならまだしも、下手すりゃぶっ殺されちまうから怖い。
まあ新撰組もオウムも仲間殺しを繰り返していたし、暴走族だって暴力団だって抜けるときは指一本ぐらいならまだしも下手すりゃ東京湾にコンクリート詰めだからな?こういう組織内のリンチって珍しいことじゃねえよな。
つーか裏切り・密告に悩まされていた連合赤軍が、群馬や長野の山中にこもる前から同志を暗殺していたとは驚きだった。ってゆうか森や永田ら幹部のいやらしいのは、自分は手を汚さず下っ端に命じるところである。
その永田洋子はご存知死刑囚だが、コイツがとにかく性格が悪い。遠山美枝子(坂井真紀ちゃん)に向かって「あなたはどういうつもりでこの山岳ベース(山中のアジト)に来たの?」とか意地悪く質問し、真紀ちゃんが「革命のために・・・」とかもっともらしく返答しても、「違うなあ・・・全然分かってないわね」と、ネチネチ絡み続ける。
「たとえば、あなた髪が長すぎない?こんな場所なのになぜ指輪してるの?なぜ化粧してるの?」テメエだって眉毛剃ってんじゃねえかよこのブスw(永田はマブい遠山に嫉妬していたらしい)
ちなみにこのブス、逮捕されたときに「東京では、まだ革命が起きてないんですか?」と捜査員に真顔で聞いたらしい。捜査員も思わず(゚Д゚)ハァ?と絶句したろうな。
つーか坂井真紀ちゃんに20代前半の役はちょっと厳しいかな・・・と思ったが、美貌とスタイルに衰えはないのでご心配なく。ドラム缶風呂に入っていた真紀ちゃんが立ち上がるのがこの映画唯一のお色気シーン。映画の中では彼女は喫茶店ですっごい美人(重信房子)にオルグされてたが、その時はまさか自分が同志に殺されるとは夢にも思わなかっただろう。
全然予備知識の無かった俺は真紀ちゃんがヒロインかと思ったが、彼女は遠山役になってしまったので早々にスクリーンから姿を消さなくてはならない。そういう配役なんだからしょうがない。
仲間への制裁が手ぬるいと言いがかりをつけられ、
「その自慢の唇を潰してみろ!」
「その高い鼻を潰してみろ!」
「二度と男に流し目ができないように、その目を潰せ!」
と、自分の手で自分の顔を殴ることを強制され、20ラウンドくらい闘ったボクサーみたく腫上がった自分の顔を見せられ(永田が鏡を差し出した)、地獄の亡者のような呻き声を上げ、縛られたまま錯乱してオシッコを漏らし、寒さに震えながら見殺しにされる真紀ちゃんは本当に迫真の演技で、さすがにその辺の駆け出し女優には無理だ、適役だと感じた。
つーか真紀ちゃんが死んでも、森と永田ら幹部が命じるソーカツが終わったわけではない。
(命じられて仲間をソーカツしてるときに)「『俺をプチブルと言ったな!』と叫びながら殴っていたのはけしからん!」
(麓に買出しに行ったついでに銭湯に入ってきたのは)「特権的行動だから許せん!」
「車を停める位置が悪い!」
「色恋沙汰はダメだっつーのになにチュッチュしてんだよ!」(そういう永田は男に不自由してなかったようだが?)
などと、とにかく本当にくだらない些細なことにイチャモンをつけて、「このスターリン主義者め!」と罵倒しつつ、仲間を殺しまくる。感情移入する暇も名前を憶える暇もなくどんどん殺されていく。真紀ちゃんのシーンでちょっと泣きそうになったが、だんだん感覚が麻痺してきて、そら殺せ!どんどん殺せ!と頭の中で煽ってたぞw
自分の主治医でさえ逮捕した小心者のスターリンはお前らとそっくりだぞ。ってゆうかお前ら中共の「文化大革命」を賞賛してたんだから仲間を殺すなんて抵抗ないか。所詮お前らみたいなのは中国や北朝鮮みたいな国が理想なんだよね・・・と説教してやりたいぐらいだ。
こういう事態に明日はわが身と恐れた連中の脱走が相次ぎ、脱走者がチクったせいなのか警察の手が迫り、一味はいくつかのグループに分かれて厳冬の山中へ彷徨を始める(それより前からアジトを転々としていたが)。森や永田も逮捕され、残ったメンバーがたどり着いた先が「あさま山荘」だった。
群馬県と長野県の境にある浅間山は標高2568m、冬になれば麓も一面雪景色。軽井沢駅の地点でさえ標高940m。
目前に浅間山がそびえる知人宅を真冬に訪れたことがあるが、台所も風呂もトイレも排水が凍結していて流れてくれなかった。夜半に車に荷物を取りに行ったところ、屋外の温度計は−12℃を指していた。豪雪地帯ではないが、ひどい時は腰まで埋まるほど雪が積もることもある。彼らはこんな厳寒の中、強奪した猟銃や弾薬を後生大事に抱えて彷徨っていたのである。
残ったのは男だけであり、既に凶行を重ねていたので、普通の?強盗団だったらヤケのヤンパチになって人質にした管理人の女性を輪姦しちまうだろうが、この事件では人質の手足を最初の二日間だけ縛る以外の危害は加えられなかったらしい。
この2年前に赤軍派が起こしたよど号事件でも人質の命は守られていた。日本の過激派の事件ではないがペルーの日本大使公邸占拠事件も同様である。また、毛沢東率いる八路軍は旧日本軍からも軍規の厳正さを評価されていた。仲間を殺しまくった連合赤軍にもこれら共産ゲリラに共通するモラルがあったようである。
そりゃともかくこの立てこもり中も、彼らの行動は情けないものだった。
人質に向かって「私たちは平和で平等な社会を目指しています」って、現に人質とって警察と銃撃戦をやってるお前らが言えるセリフか?難癖つけて仲間を殺しまくったお前らが「平等」なんて口にできるのか?
みんなでカレーとかお握りとか山荘の中のものを食いまくってたクセに、銃撃戦の合間に偶然テーブルの上にあったビスケットを口にした仲間を咎め、「総括だ!」といって銃口を向けるシーンも、ホントにあった話なのか?
警察と銃撃戦をやってんのに仲間割れしてどうする?つーか論理的に盗み食い野郎もソーカツしなきゃ筋が通らんな?そういう難癖つけて仲間を殺してきたんだから。
結局そいつが「自己批判します」と言って収まったが、彼らの全ての行動の愚かさを象徴するエピソードだな。
一番情けなかったのは、ラジオでニクソン訪中を知って唖然としていたこと。彼らにとって当時のアメリカは仇敵であり、中国は味方のはずだったんだろうけど、そんな彼らの期待をよそに大国の外交は進んでいたのである、ま、そういう勘違いもあの時代だったから無理もないかもね。(つーか未だに頭の中が冷戦期から抜けないサヨも多くて情けない。内輪のMLとかで「チベット騒乱はアメリカの陰謀だ!」とかいう妄想も珍しくない。これじゃサヨに未来はないね)
いいかげん籠城にも疲れ、そろそろ年貢の納め時だと悟ったのか、こんな自分らの愚行にも何かの価値があったかのように弁護する雑談が始まる。すると一番若いの(当時16歳)がキレて、「俺も!アンタも!勇気がなかったんだよ!」と叫ぶシーンがハイライトだよな。
たしかにお前らには、意見を言う勇気、仲間を見殺しにしない勇気、どこかで引き返す勇気が全く無かった。つーか今更気付いても遅えよ。
ほどなく警官隊が突入し、何日も立てこもってた割にはあっさり捕まって一巻のおしまい。
その後、幹部の森は獄中自殺、永田ら数人は死刑確定。他には無期で服役中の者、出獄して実家を継いだ者、人質との交換で中東へ逃れた者、それを断った者、普通に働いている者、出所してから30歳も年下の女性と結婚し子宝に授かった人など様々。詳しいサイトがあるので確認してね。
彼らはあの時代の熱狂の中で道を踏み外した単なる犯罪者なのか?それとも現代のノンポリ人間や俺みたいなネトサヨにも、時代を越えて何かを語りかけてくるのか?皆さんそれぞれの感想をお持ちだろう。生意気な批判ばかり書いちまったが、彼らの足跡は俺さえも惹きつけてやまない。なんで散々悪口書いたクセに惹きつけられるのかと聞かれても答えられんけどね。
難しいことは言えんが、こんなネタバレ投稿をうっかり読んじゃった人も是非観て欲しい。3時間が短く感じるくらいの中身の濃さである。そのうちDVDも出るんじゃないの?この俺が3時間、タバコもオシッコも忘れてたんだから相当なもんである(笑)
(関係ないけど俺は「テアトル新宿」で見たが、あそこはタバコ吸うとこ全然ないから注意してねw)
まして革命を目指す思想を背負って活動していた人たちはその争いもすさまじいものになるということは想像はできましたが、実際のところを鷹嘴さんの文章を読むだけでも想像を超え、慄きました。
やっぱり人間堅すぎるのは本当によくありませんね。人間の大きさ・強さは柔軟性と包容力の高さだとつくづく思います。
ま、私もたいしたものではありませんが(苦笑)。
> 僅かな意見の違いで(たとえば相手の考えにちょっと耳に痛い異議を申し立てるメールを送っただけで)ひどい喧嘩に発展し絶交に至ることがままあります。
あんまり大きな声で言えませんが、本当にそういう事例が多くて情けなくなります。
> やっぱり人間堅すぎるのは本当によくありませんね。人間の大きさ・強さは柔軟性と包容力の高さだとつくづく思います。
仰る通りです。
私はいざこざを仲裁しようと思って、逆に自分が騒動の中心になってしまうこともあります(笑)