ずっと前のことだが、月曜日にスピリッツ、木曜日にモーニングを買って通勤電車の中で読むのが習慣だった。ヤンマガもよく買っていた(今はかなり貧乏になってしまってマンガを買う金も無いw)。
楽しんだマンガを挙げりゃキリがないが、モーニングに連載され和久井映見サマ主演のドラマにもなり、日本酒ブームの先駆けになったと言われる?「夏子の酒」(尾瀬あきら)も楽しみだった。もっとも周期的に酒の席で醜態を晒す人間だが基本的に“下戸”なので日本酒の話はあまり興味がなく、夏子タソの八面六臂の活躍ぶりや農業問題に興味を惹かれていた。自分の経歴を「百姓だ」としか語らない謎の山男?が、農薬の空中散布も「しかたがないことだ」と開き直る青年の首根っこをつかまえ、農薬が散布されたばかりの水田に押し付け「ここに生息する生物はどうなる?」と説教していたシーンが印象に残っている。
ところで夏子タソが色男に射止められて連載が終了し、しばらくしてから同じ作者による新連載が始まった。第一回目から期待して読みはじめたのだが、ただの農村の少年の生活がテーマなのかなあ?と興味を失いかけた。
ところがラストの数ページ。ある夜半、主人公の「哲平」がクラスメートの「真由」と、夜な夜な駆け回っているという幻の「白い馬」を見るために「御料牧場」に忍びこんでいたとき、自宅では「哲平」の祖父がぼんやりテレビを見ていると、驚愕のニュースが流れた。
「・・・次のニュースです。かねてより千葉県旛田郡冨野村・蜂谷町に建設が予定されながら、
住民の根強い反対運動にあって暗礁に乗りあげた形となっていた新東都国際空港は、
今日の加藤首相と友名千葉県知事の会談の中で・・・
空港予定地を千葉県茂田市三野塚に変更するとの結論に達しました」
「この急転直下の三野塚案はその理由として
冨野の反対運動が治安問題にも発展しかねないこと
また羽田空港の能力が限界に近づいていることなど・・・」
祖父の表情は見る間に緊張していった。
「ぼくらが白い馬を見た日――
ぼくらの知らない人たちが
ぼくらの村をつぶすことを話しあっていたんだ」
言うまでもなく「冨野村」は「富里」、「新東都国際空港」は「新東京国際空港」、「加藤首相」は「佐藤首相」、「茂田」は「成田」、「三野塚」は「三里塚」をもじったものである。
「この話か・・・!」武蔵野線のドアにだらしなく寄りかかって読んでいたのだが、思わず鳥肌が立ってきたことを憶えている。このマンガは成田闘争について全く知らなかった俺にとって(もちろん現在でも知っているとは言えないが)、格好の入門書になった。
このマンガは単に農民や学生が国家権力と戦う姿を描いているだけではなく、貧しさから土地を手放さざるを得ない農民、事情から「条件派」に鞍替えせざるを得ない農民の苦しみも描かれている。戦後に三里塚を開拓した農民の苦しみは、(俺が思っていたような)空港さえ阻止すれば解消するような単純なことではなかったのである。また農民を追い詰めることに苦悩しながら土地収用を進めざるを得ない公団職員の葛藤は圧巻だった。
ところで「旗旗」という人気ブログで、このマンガを「復刊ドットコム」にリクエスト投票する呼びかけが行われている。
「復刊交渉開始まであと55票!」ということだが、11/21現在、俺の投票も含めるとあと50票で復刊交渉開始の運びとなる。投票したからといって予約を入れるわけではないので、気軽に投票してみませんか?「電子書籍化希望」にチェックを入れ、ネット上でこのマンガを見てみませんか?
・・・話は変わるが、俺はこのマンガに岩山大鉄塔撤去や管制塔占拠事件も描かれることを期待していたが、1971年の第一次・二次代執行名の激闘、そして「矢野原純」の自殺による反対派農民の苦悩を描くことで終了している。あれらの事件はこのマンガにとってテーマ外だったのである。
しかし激しい反対闘争が行われていたころの、ガキの時分の俺にとっては、管制塔占拠事件は成田空港反対運動を象徴するものだった。(他記事へジャンプ!)


